年々、時がたつのが速くなる。忘れっぽくもなる。けれど「その時」を切り取った一枚一枚が記憶を呼び覚ます。都内で開催された東京写真記者協会の報道写真展には、今年を記録する約300作品が並んでいた
▼会場で「新潟」を探す。パリ五輪で銀メダルを手にしたフェンシングの古俣聖(あきら)選手も、大相撲界に新風を吹かせた大の里も、いい表情だ。本県で地力をつけて飛躍した。十日町市の奇祭「婿投げ」を捉えた一葉も目を引いた。数々の写真にまつわる印象深い言葉を思い起こす
▼「1日1回は泣いてもいい」。能登半島地震に襲われた輪島市の避難所で、小学3年生の少年が母親と交わした約束だ。戦火やまぬウクライナのゼレンスキー大統領は「これ以上犠牲者を数えたくない。生まれる子どもを数える日が来ることを望む」と吐露した
▼「無罪勝利が完全に実りました」は冤罪(えんざい)の闇から脱した袴田巌さんの一言。姉のひで子さんは「拘置所で48年間ずっと復唱した言葉だと思う」と長期拘禁に耐えた巌さんを思いやった
▼大リーグで異次元の活躍をみせた大谷翔平選手は「進めば進むほど、足りない、足りないという野心が増えていった」。飽くなき挑戦にどれだけの人が胸躍らせたことか
▼石破茂首相は初の所信表明で「かつての日本は今ほど豊かではなかったかもしれないが、もっとお互いを思いやる社会だった」とし「すべての国民に笑顔を取り戻す」と宣言した。ぜひ有言実行を。新年は明るい話題であふれますように。