大きな災害で始まり、改めて自然の脅威を思い知らされた1年だった。避難所や仮設住宅での生活を余儀なくされ、愛着ある住居で年を越すことができない人たちへ思いをはせたい。
元日に発生した能登半島地震の犠牲者は、関連死を含め500人を大きく超える見通しとなった。追い打ちをかけるように9月には豪雨被害が加わった。心身ともに疲れ果てた1年だと感じている人は多い。
本県も死傷者が出た。液状化のため2万棟を超える家屋が被害にあった。毎年のように起きる自然災害で、多くの犠牲が出ていることは残念でならない。
被災地にボランティアが駆けつけ、支援物資が届いた。助け合い、支え合う精神をこれからも育んでいきたい。
8月には南海トラフ地震臨時情報(巨大地震注意)が初めて出された。次の災害は、いつ襲ってくるか分からない。情報の意味を知り、日頃の備えを忘れないことが大切だ。
◆民主主義が問われた
世界的な「選挙イヤー」だった今年は、日本や米国で、それぞれの国民が現政権に「ノー」を突きつけた。
国内では、石破茂首相が就任後すぐに行った解散・総選挙で、自民・公明両党の連立与党が大敗した。
昨年露見した自民党派閥裏金事件から続く「政治とカネ」の問題に対する有権者の怒りが表れた結果だ。
少数与党となり、安倍晋三元首相以来続いた自民1強時代が終わりを告げた。与党だけでは政策を遂行できず、野党の協力を得ねばならない大きな変化がもたらされた。
石破首相は、臨時国会の所信表明演説で「民主主義のあるべき姿とは、多様な国民の声を反映した各党派が、真摯(しんし)に政策を協議し、より良い成案を得ること」と述べた。
言葉通りに、謙虚な姿勢で丁寧な政権運営を続けて、失われた政治への信頼を取り戻さねばならない。
民主主議について問われた年でもあっただろう。
世界が注視した米大統領選では、当選した共和党のトランプ前大統領が遊説中に銃撃された。民主主義が脅かされた。
韓国では尹錫悦(ユンソンニョル)大統領が「非常戒厳」を発令し、民主主義を危うくした。日本と関係の深い両国で、こうした事態が起きたことは大きな衝撃だった。
ウクライナやパレスチナ自治区ガザでの戦火は今年も消えることはなかった。増え続ける死傷者に心が痛む。
長期化するウクライナ侵攻では、ロシア軍に北朝鮮兵が加わった。第三国の参戦に、ウクライナのゼレンスキー大統領は「世界戦争への第一歩だ」と危機感をにじませた。
ロシアのプーチン大統領は核兵器の使用基準を緩和した。核の威嚇を繰り返す姿勢は、断じて容認することはできない。
◆核廃絶へつなげたい
世界が不安定化する中で、設立後一貫して「核なき世界」の実現を訴えてきた日本原水爆被害者団体協議会(被団協)が、ノーベル平和賞を受賞したことは、核廃絶に向けた大きな希望となった。
高齢化が進む被爆者の願いを次世代へと伝え、世界に広げていきたい。
佐渡市の「佐渡島(さど)の金山」が世界文化遺産に登録を果たしたことも、本県に大きな喜びをもたらした。
スポーツの力は、私たちに勇気と感動を与えた。
パリで開催された五輪とパラリンピックでは日本選手の活躍が、国内を沸かせた。フェンシング男子エペ団体では、新潟市西区出身の古俣聖(あきら)選手が銀メダルを獲得した。
大リーグの大谷翔平選手は、メジャー初となる「50本塁打50盗塁」の快挙を達成した。
けがなどで苦しい時を乗り越えての活躍は、被災者をはじめ日本中を元気づけてくれた。
困難な状況に置かれても共助の精神を大切にし、喜びを分かち合える年を迎えよう。