ようやくこぎ着けた停戦合意だ。着実に履行し、恒久的な停戦につなげなければならない。早急に取り組む必要があるのは、劣悪な人道状況の改善だ。国際社会には積極的な支援が求められる。
イスラエルとイスラム組織ハマスがパレスチナ自治区ガザの停戦に合意した。
第1段階として戦闘を19日から6週間休止し、ハマスは人質33人を段階的に解放する。イスラエルは拘束するパレスチナ人数百人を釈放し、ガザの人口密集地から軍を撤収させる。第1段階中に、それ以降の停戦継続を協議する。
恒久停戦につながる第2段階の履行が始まればハマスは追加で人質を解放し、イスラエル軍はさらにガザからの撤収を進める。恒久停戦合意に向けて交渉を続け、第3段階でガザの復興を進める。
停戦交渉には米国のバイデン大統領だけでなく、トランプ次期大統領が深く関与した。大統領就任前の停戦を求め、次期中東担当特使を派遣するなどしてイスラエルとハマスに強い圧力をかけた。
イスラエルのネタニヤフ首相はトランプ氏との関係維持を望み、ハマスは最高指導者2人が相次ぎ殺害され弱体化が進んでいたことも合意に至った背景にある。
イスラエルとハマスの戦闘は15カ月以上に及んでいる。2023年11月下旬から7日間休止されたが、その後もイスラエルが攻撃を続けるなどしてきた。
今回は恒久停戦の可能性を含む合意内容だ。両者には着実な履行を強く求める。
互いの不信感や憎悪は根強い。停戦合意の発表後もイスラエル軍がガザ各地を攻撃するなど、予断は許さない。トランプ氏は20日の就任後も引き続き、恒久停戦に向けた努力をしてもらいたい。
戦闘は23年10月7日のハマスによる奇襲攻撃が発端だ。イスラエルは報復としてガザ攻撃を始め、空爆や地上侵攻を行った。病院や学校施設なども激しく攻撃し、子どもや女性を含む4万6千人以上が死亡した。
ガザの人口の9割に当たる人々が避難者となり、極度の食料不足が常態化している。餓死や凍死の報告もある。
停戦合意によって何より急がれるのは、深刻な人道危機の解消だ。ガザの住民を救うため、関係諸国は大規模な人道支援を行う必要がある。日本政府も積極的に関与しなければならない。
深刻な人道危機をもたらしたイスラエルは各国からの批判を真摯(しんし)に受け止めるべきだ。
イスラエルとの対立で大国のイランは疲弊し、レバノンの親イラン民兵組織ヒズボラも衰退した。イランを後ろ盾としてきたシリアのアサド政権は崩壊した。
混乱する中東の安定化にも、日本を含む国際社会は力を尽くさなければならない。
