思い詰めている子どものSOSに早く気付くことが重要だ。しっかりと寄り添い、自殺に追い込まれることのない社会を築きたい。
警察庁の自殺統計に基づく厚生労働省のまとめによると、2024年の小中高生の自殺者数は、暫定値で527人と23年より14人増え、統計のある1980年以降で最多となった。
女子中高生の増加幅が大きい。女性は中学生が2023年より19人多い99人、高校生は17人多い183人だった。
19歳以下の女性の原因・動機は、「健康問題」「学校問題」「家庭問題」の順に多い。新型コロナウイルス禍が収まり、学校に行かなければならないとプレッシャーに感じた可能性もあるだろう。
子どもに学校や自宅以外の第三の居場所やつながりがあれば、状況が変わりうる。
保護者や教育現場が余裕を持って子どもと接することができるように、幅広い支援が欠かせない。官民で知恵を絞る必要がある。
見逃せないのは、未遂や自傷行為など密接に関わる行動だ。
自殺予防に取り組むNPOは、自傷行為などを頭ごなしにやめさせるのではなく、どんな時に自分を傷つけたくなるのかを確かめ、音楽や運動など別の行為に転換することを共に探るという。
「あなたはかけがえのない存在だ」と伝える意義を訴える専門家もいる。周囲が心を寄せ、子どもの自己肯定感を高めてあげたい。
日本では自殺と関連する救急搬送症例を登録する「自傷・自殺未遂レジストリ」の運用が始まっている。自殺者の背後に存在する何十倍もの自傷・未遂者のデータを分析するものだ。自殺対策や救命救急の現場で生かしてほしい。
子どもの自殺が多い背景には社会の閉塞(へいそく)感もあるだろう。
国連児童基金(ユニセフ)の子どもの幸福度に関する報告書では、先進・新興国38カ国の中で日本の総合順位は20位だった。分野別だと「身体的健康」は1位だが、「精神的幸福度」は37位と最低レベルで、両極端だった。
日本は、子どもが生活に満足していると回答した割合が最も低い国の一つで、自殺率も平均より高い。重く受け止めねばならない。
24年の自殺者総数は2万268人で、人口10万人当たりの死亡者数(自殺死亡率)は16・3人だ。
本県の自殺者数は451人だった。自殺死亡率は21・2人で、都道府県別で3番目に高い。80歳以上が95人で前年より22人増えるなど、中高年が目立つ傾向にある。
苦しい時は1人で抱え込まず、信頼できる人に相談してほしい。