痛ましい事故が相次いでいる。ドライバーと歩行者双方がルールを順守し、思いやりの心を持つことで事故を防ぎたい。

 県内で17~21日に5件の死亡事故が発生した。5日連続の発生は2013年以来の事態だという。

 今年は24日までに45人が交通事故で亡くなっており、前年より2人多い。全国的に死者数が減少傾向にある中で、本県の状況は憂慮しなければならない。

 県警はこうした状況を受け、交通取り締まりなどを最大限強化する「交通死亡事故シャットアウト緊急対策」を県内全域で実施している。街頭指導を強化するほか、交通違反の取り締まりを行う。

 交通事故を防ぐには、ドライバーはもちろん、歩行者を含む道路を利用する全ての人が安全に気を配る必要があるだろう。

 特に日没の時間帯に注意してもらいたい。17~21日に発生した5件の死亡事故も4件は夕方から夜間に発生している。

 日没の時間が早くなるこの時期、運転する側は早めにライトを点灯することを心掛けたい。

 歩行者は黒っぽい服装を避けたり、反射材を身につけたりして、ドライバーに気づいてもらうようにすることが大切だ。

 高齢者が関係する事故も多い。昨年の交通事故による死者の7割が65歳以上の高齢者だった。

 少しでも不安を感じたら車の運転をやめるほか、徒歩などで道路を横断する際にも十分な安全確認が必要だ。

 加齢により、身体能力や視力、判断能力などが低下していることを意識しなければならない。

 何よりも、基本的な交通ルールを順守し、譲り合いの心を持って危険を避けたい。

 同時に、安全を無視した無謀な運転を根絶するためのルール作りも急ぎたい。こうした事故により突然、家族を失った遺族の無念は計り知れない。

 制御するのが困難なほどの高速での運転や、飲酒運転による事故を起こした場合、危険運転致死傷罪に問われる。しかし、現行法には危険運転の明確な基準がないため、法定刑の軽い過失運転などで立件されたケースもあった。

 遺族らが無謀で悪質な運転に対し相応の処罰を求める心情は十分理解できる。国も、遺族の声を受け、危険運転致死傷罪を適用する際の具体的な要件についての議論を進めている。

 法制審議会の9月の部会では、飲酒と速度を巡り、複数の数値基準案が示された。早ければ年内にも結論を出す見通しだ。

 ただ、運転手の技術や道路状況などはその時々で違うため、誰もが納得できる設定は簡単でないとの指摘もある。

 多くの人の理解を得られる結論を出せるよう、国は十分な議論を重ねてほしい。