日本人を含む多くの外国人を監禁し、犯罪に加担させている実態が明らかになってきた。連れ去られた人々の救出、保護を急ぎたい。全容を解明し、犯罪組織を撲滅しなければならない。

 犯罪組織が流入するミャンマー東部で、特殊詐欺拠点となっている施設から1~2月に計7千人以上の外国人が保護されたことが分かった。タイ当局は、ミャンマーの少数民族武装勢力に救出への協力継続を促しているという。

 タイ当局によると、監禁された外国人は約1万人に上る。中国人が多く、タイ人、ベトナム人の他に日本人も含まれている。

 日本外務省によると、ミャンマー国境地域で拘束したり保護したりした日本人は7人いた。

 驚くのは、高校生が詐欺に加担させられていたことだ。タイの国軍と警察は、日本人初の人身売買被害者とみている。高校生をだまして連れ去った疑いで日本人の20代の男が拘束された。

 高校生はインターネットで仕事を紹介され、ミャンマーに渡った。仕事場と生活スペースが整った施設で、警察官をかたる詐欺電話の「かけ子」をさせられていた。

 他にも複数の日本人が同様の境遇にあり、詐欺のノルマを課されて報酬を受け取っていたという。

 まだ捕らわれている日本人が複数いる可能性がある。だまされた邦人を早く救出したい。

 警察庁が闇バイト応募者に対して警察に相談するよう呼びかけた結果、昨年10月から今月までに保護措置を講じた248件のうち10件が海外渡航関連で、その半数以上が10~20代の若者だった。

 オンラインゲームや交流サイト(SNS)を通じて知り合った人物から「もうかる仕事がある」などと誘われ、航空券なども手配されて渡航していたケースもある。

 タイに渡った後、ミャンマーに密入国させられた日本人は、マシンガンで武装した人物が監視する建物に連れて行かれ、ノルマ未達成の場合はスタンガンで暴行される状況下だったという。

 遠い海外での出来事ではない。日本にいてもSNSを通じて犯罪に巻き込まれる実態がある。一人一人が注意し、家庭や学校、社会全体でも警戒を強めたい。

 ミャンマーでは2021年2月のクーデター後、国軍と少数民族武装勢力や民主派が対立し、内戦状態が続く。中央の統治が及ばない国境地域で犯罪組織が増殖し、国際的な特殊詐欺や違法カジノ運営に手を染めてきた。

 中国マフィアの関与が指摘され、外国人の監禁や残酷な拷問の実態も次々と判明している。

 一部の詐欺収益はミャンマーの軍政に流れているとも指摘される。長期化する混乱が犯罪組織の温床となっているといえる。国際社会はミャンマーの平和と安定の実現に力を尽くすべきだ。