歳出が膨張する一方、財源は借金頼みだ。金融市場では財政が悪化するとの懸念が根強い。市場の警鐘を受け止める必要がある。
政府は2026年度当初予算案を閣議決定した。一般会計の歳出総額は122兆3092億円で、2年連続で過去最大を更新した。成長投資を重視する高市早苗首相の意向を反映したと言えよう。
物価高や人件費の上昇で政策経費が膨らんだ。借金である国債の償還など国債費が31兆円を超え、財政を圧迫する。
税収は7年連続で過去最高を更新する見込みだが、歳入の4分の1に当たる29兆5840億円は新たに国債を発行して賄う。
首相は、今回の予算案で国債の新規発行額を2年連続で30兆円以下に抑え、財政規律に配慮したと訴えている。
また、積極的な財政出動で経済の好循環が生まれれば、景気拡大に伴って税収が増え、財政規律は維持できると主張する。
しかし、金融市場では国債が売られ、長期金利が上昇傾向となっている。首相の下で国債の発行額が膨らむとの見方が強いためだ。
市場は首相の主張を懐疑的に見ているのではないか。「強い経済」の実現には、市場の信認を確保することが不可欠だ。
医療や年金に充てる社会保障関係費は39兆559億円で、高齢化による伸びに加え、医療機関の収入となる診療報酬をプラス改定するなどして増えた。
診療報酬引き上げは、医療機関の増収や職員の待遇改善につながる一方、国民の負担は重くなる。各方面に及ぼす影響について、詳細な説明が欠かせない。
防衛費は過去最大の9兆353億円に上った。戦闘の様相が激変していることから、各国で導入が進む無人機を大量に取得し、沿岸防衛体制を構築する。
政府は23年度からの5年間で必要な防衛費を約43兆円と定めている。必要な防衛力の積み上げではなく、「規模ありき」となっていないか、チェックが必要だ。
農林水産予算は微増の2兆2956億円とした。事実上の「コメ減反(生産調整)政策」と指摘されてきた交付金については、巨費計上を継続する。
コメ価格高騰を受け、石破茂前政権は増産を掲げたが、方針転換を改めて印象付けた。生産現場の混乱を招かぬよう、丁寧に情報発信してもらいたい。
予算案が膨張した背景には、与党が参院で過半数割れしていることもある。
自民党は円滑な国会運営を優先し、高校授業料や給食費の無償化、年収の壁引き上げなどで野党に譲歩を重ねてきた。
来年1月召集の通常国会で予算案を審議する際は、安定財源の確保についても、真摯(しんし)に議論しなければならない。
