2026年が幕を開けた。平和で、安心して暮らせる穏やかな1年であってほしい。多くの人に共通する願いだろう。
誰もが当たり前に抱く、ささやかな願いとも言えるが、たやすくかなうわけではない。
3月で発生から15年になる東日本大震災で、昨年10月、胸に迫るニュースがあった。
津波で行方不明になった6歳女児の遺骨が、地震から14年7カ月ぶりに家族の元に戻った。骨の一部が自宅がある岩手県山田町から約100キロ離れた宮城県南三陸町で見つかった。
◆忘れてはならぬ被害
「帰ってきてくれてありがとうという気持ち」。母親は小さな納骨袋をいとおしそうに抱きしめた。「止まっていた時計が動き出した」とも話した。
小さな遺骨は、まだ終わらぬ震災被害の存在を訴えているように思えてならない。
東京電力福島第1原発事故による被害もその一つだ。
今年も正月を故郷で迎えることができなかった多くの被災者がいることを胸に留めたい。
原発の廃炉作業は困難を極め、思うように進まない。15年の節目に改めて、過酷事故の教訓を直視するべきである。
福島事故後、全7基が停止した東電柏崎刈羽原発は、県民意識調査で再稼働への賛否が拮抗(きっこう)する中で、花角英世知事が再稼働への道を選んだ。
事故を起こした東電の原発が近く動き出す。前提とするべき避難など安全の確立は不十分で、見切り発車は否めない。
本県はこれまで幾度も大きな地震に見舞われた。今日で発生から2年になった能登半島地震では液状化被害が生じ、被災者の生活再建は途上にある。
原発事故と気象災害が重なる不安は常に県民の中にある。政府や東電は、安全対策に終わりはないと心得てもらいたい。
世界を見渡せば、また戦火の中で新年を迎えた人々がいる。
ロシアが侵攻したウクライナや、パレスチナ自治区ガザの状況は、おびただしい犠牲が生じても、一度始まった戦争を終わらせることがいかに難しいかという現実を突き付ける。
戦争は愚かな行為だ。国際社会は今年こそ、それぞれの戦闘を終結させるために全力を尽くさなくてはならない。
昨年は、自衛隊による武力行使を可能にする存立危機事態を巡る高市早苗首相の国会答弁が中国の反発を招いた。
中国軍機による自衛隊機へのレーダー照射など、偶発的な武力衝突に発展しかねない事態が起きたことは見過ごせない。
◆被爆国の責務果たせ
高市首相は防衛力の増強を急ぐが、近隣国との間に緊張を生むものでもある。抑止力は軍事力より、対話による外交努力で働かせるべきだ。
元号が昭和に改元されて100年に当たる今年、敗戦を教訓に、戦後の日本が長い歳月をかけて築き上げた平和国家の価値にも目を向けたい。
世界では強権的な指導者が核による威嚇をちらつかせ、核開発を進める国もある。
その中で、政府が非核三原則の見直しを検討していることは気がかりだ。唯一の戦争被爆国である日本は、世界に核廃絶を求める責務がある。政治家が強く自覚しなくてはならない。
戦争の犠牲者を慰め、平和を祈る花火「白菊」を一人一人の胸に咲かせたい。
平和を持続させるには、さまざまな国の人々と協調し、多様な生き方や考え方を認め合う共生社会の実現が不可欠だ。
民主主義をしっかりと機能させることがその土台になる。
今年は知事選が控える。原発再稼働、深刻な人口減少問題は重要な焦点となろう。豊かな故郷を次世代にどう引き継ぐか。農業や地場産業の活性化、環境対策なども大切な課題だ。
楽しみなのは「平和の祭典」である。2月にミラノ・コルティナ冬季五輪が開幕する。
フィギュアスケート女子の中井亜美、スノーボード男子ハーフパイプの平野歩夢といった本県関係選手が活躍できるのも、世界が平和であってこそだ。大舞台での躍進が待ち遠しい。
