どのように言い繕っても正当化することはできない。武力による主権国家の体制転覆は大国のおごりであり、無法行為である。
米国がベネズエラを大規模に攻撃した。反米左派のマドゥロ大統領らが拘束され、米国内の施設に収容された。
トランプ米大統領は米国に流入する合成麻薬フェンタニルを「大量破壊兵器」と位置づけ、マドゥロ政権が麻薬密輸に関与していると非難していた。
攻撃は数カ月前から計画され、陸海空の各軍のほか、中央情報局(CIA)も関与した。米紙によると、米軍の攻撃で民間人を含む少なくとも40人が死亡した。
トランプ氏は記者会見で「並外れた成功」を収めたと自賛し、政権移行まで米国がベネズエラを「運営する」とも表明した。
しかし、攻撃が「武力による威嚇または武力の行使」を禁じた国連憲章に反することは明白だ。
昨年9月以降、米政府はカリブ海で「麻薬密輸船」とみなす船舶の取り締まりに軍を投入し、100人以上を殺害した。
攻撃後の会見でもトランプ氏はマドゥロ氏が麻薬密輸などで「米国に計り知れない苦痛と人的被害をもたらした」と述べた。
実際には、米国に流入するフェンタニルの多くはメキシコで生産されているとみられる。ベネズエラからの麻薬流入は差し迫った軍事的な脅威とは言えない。
攻撃の合法性には米国内でも異議を唱える声が上がっている。
一方、トランプ氏は世界最大の原油埋蔵量を誇るベネズエラでの権益確保に意欲を隠さない。
ベネズエラは50年前に石油産業を国有化したが、その後インフラが劣化し、産油量も減少している。トランプ氏は会見で米企業がインフラを修復し、石油産業を再建するとも主張した。
攻撃に自国の経済的利益を得る意図があるなら言語道断だ。
米国にとって南北米大陸を中心とする西半球は、安全保障、経済両面で戦略的に極めて重要な意味を持っている。
トランプ氏は第2次政権初の安保政策「国家安全保障戦略(NSS)」に掲げた、西半球への他国の干渉に反対した19世紀の「モンロー主義」への回帰を、会見でも言及した。
中南米における反米勢力の代表格であるベネズエラの政権を崩壊させて見せしめとし、勢力圏を拡大する狙いが透ける。
マドゥロ氏の政権が強権的で非民主的だとはいえ、明らかな主権侵害だ。加えて今後、地域が不安定化する恐れもある。
不当な武力攻撃は、ウクライナ侵攻を続けるロシアや、台湾を威嚇する中国に誤ったメッセージを送ることになる。
米国は自制し、国際法を順守しなければならない。
