議論を尽くして賛同を広げる努力を、政治は決しておろそかにしてはならない。立場の異なる相手とも意見を交わすことで、政策が磨かれる。
政治不信の払拭は党派を超えた課題だ。不信の根底にある「政治とカネ」の問題に決着を付けねばならない。深刻な物価高も、党利でなく国民の生活を優先した協議が必要になる。
人口減少や地方創生など、長期的な将来展望を持って策を講じるべき課題は山積している。
昨年10月、高市早苗氏が首相に就いた。臨時国会の所信表明演説では「事独(ひと)り断(さだ)む可(べ)からず。必ず衆(もろとも)と与(とも)に宜(よろ)しく論(あげつら)ふ可(べ)し」と、聖徳太子の十七条の憲法の一部を引いた。
多党化の時代である。独善を排して意見を聞き、議論を重視するとの決意だろう。
その演説通りに政権運営がされたのか、疑問が残る。
◆国民の声に耳傾けよ
石破茂前政権は衆参両院の国政選挙で連敗し、退陣に追い込まれた。参院選では改選、非改選を合わせた議席が自民と、与党だった公明の両党で過半数を割り込む大敗となった。
要因には、自民の派閥裏金事件への不十分な対応がある。自民に解党的出直しが求められていたことは明らかだ。
しかし、総裁選に勝利した高市氏は、事件に関係した旧安倍派の重鎮を党要職に起用した。
選挙で示された民意を受け止めたとは言い難い。公明が長期に及ぶ連立政権から離脱したのも、事件への自民の対応に拒否感を募らせたことが大きい。
日本維新の会との連立政権発足後も、企業・団体献金の規制強化の議論は先送りが続く。
これ以上、与党の都合を優先することは許されない。今月始まる通常国会で、政治とカネの問題に抜本策を講じるべきだ。
自維政権が臨時国会で成立を目指した衆院議員定数削減法案は強引さが際立った。法施行から1年以内に与野党協議がまとまらなければ、自動的に議席を減らす規定を盛り込んだ。
話し合い、結論を得るのが民主主義である。その過程を軽視してはならない。国民の意思表示の手段である選挙に関わる議題であればなおさらだ。
政権は通常国会で法案の成立を期すが、まずは削減の必要性を十分説明すべきである。
懸念されるのは、前のめりとも映る性急さで国の在り方を決めようとする政権の姿勢だ。
高市氏の指示を受け、自民の安全保障調査会は安保関連3文書の改定に着手した。国家安保戦略に明記された「非核三原則」の見直しも検討する。
非核三原則は唯一の戦争被爆国として堅持してきた国是といえる。見直しで周辺国と緊張が高まる可能性もある。影響を冷静に見極めなければならない。
◆共生社会を築きたい
旧姓の通称使用を法制化する動きにも批判が上がる。
政府は通常国会に関連法案を提出することを目指す。法案は「同一戸籍同一氏」の原則を維持し、当事者や経済界が求める選択的夫婦別姓とは一線を画す内容になると見込まれる。
今月中には、外国人政策の総合的対応策をとりまとめることにしている。国籍取得の要件を厳格化するなど、規制強化を軸とした中身が検討されている。
人口減少が進む本県などでは、介護や農業といった分野で外国人材は欠かせない。排外主義に陥らず、共生し続けられる仕組みを探らねばならない。
物価高対策では「おこめ券」の活用を促したが、コストの高さなどから県内をはじめ多くの自治体が使わなかった。
政策が困難を抱える人に届くのか、政治は常に国民の目線で問い続けるべきだろう。
通常国会には過去最大の122兆3千億円超の2026年度一般会計予算案が提出される。防衛費も過去最大となる。政権は「責任ある積極財政」をうたうが、財源への言及は乏しい。
本来、政権を監視すべき野党だが、昨年末に「年収の壁」引き上げで要求を通した国民民主党は、既に予算の早期成立へ協力を約束した。政権入りの可能性も模索する。
野党第1党の立憲民主党は野党をまとめきれないままで、支持率の低迷が著しい。
各党が個別政策の実現ばかりを優先し、与党との協力を繰り返していては、政治全体の方向性が失われる。将来に責任を持った議論となるか、野党の力も試されている。
