朝取り、朝もぎ、朝摘み…。みずみずしいトマトやキュウリ、枝豆にイチゴなどが思い浮かぶ。「朝」は野菜や果物の新鮮さをアピールする最強のキーワードと言える

▼では「朝掘り」と言えば? 手元の辞書の用例に載っているのは、タケノコだ。スーパーの広告でも見たことがある。特産地の田上町で収穫を体験した。道筋の直売所に「朝掘り」ののぼり旗が立っている

▼粘土質の新津丘陵に広がる竹林が、えぐみが少なく、柔らかなモウソウチクを育てる。しかし、住民の高齢化などで竹林の荒廃が進む。そこで所有者20軒以上から管理を請け負い、栽培もする。「かぐやの里再生計画」と銘打った取り組みだ

▼タケノコ収穫と田植えのピークが黄金週間に重なるため、農家も大助かりだ。取り組みを推進する阪内机由(きよし)さんは、刃の幅が10センチ足らずの唐くわで地面を探る。「竹林も間伐が大切。林が密だとうまいものができない」

▼林に光が差し込んで風が通る。薄紫のカキドオシが咲いている。掘り方のコツは、地面に出た薄緑の芽から20センチ前後のところにくわをストンと入れる。「掘るというより、根っこを断つ感じ」。くわを起こすと、春の味覚が顔を出す

▼すぐにスライスして口に入れる。湯がかないでも甘い。本物の刺し身は朝掘りの特権だ。タケノコは不作と豊作を繰り返す。今年の出来は最高という。上越地域などでは、細身のネマガリダケも人気だ。さあ黄金週間。入山マナーや安全に気をつけ、旬の滋味を楽しみたい。

朗読日報抄とは?