「危険水域」に入ったと言っていいだろう。その要因に商品券配布問題があるのは間違いない。
問われているのは、世間の常識とかけ離れた自民党の組織風土や文化だ。石破茂首相はもちろん、議員一人一人がそのことを認識し、改めなければならない。
共同通信社が22、23日に行った全国電話世論調査で、石破内閣の支持率が急落した。
前回2月の調査は39・6%だったが、今回は12・0ポイントも下落し、27・6%となった。
昨年10月に石破内閣が発足してから最も低い。30%を割り込むのは、岸田内閣末期の昨年8月以来のことだ。
背景にあるのは、石破首相と自民衆院1期生15人との会食に際し、首相事務所から土産名目で1人10万円分の商品券が事前に配られた問題だ。
世論調査で商品券配布は「問題だ」とした回答は71・6%に上っている。首相にはクリーンなイメージがあったからこそ有権者の失望が大きく、それが支持率急落につながったとみられる。
高額な商品券配布が国民の一般常識から外れていることは明らかだ。首相自身も「世の中の感覚と乖離(かいり)した部分があった」などと述べ、謝罪を繰り返している。
一方で「政治活動に関する寄付ではない」として違法性は否定する。首相公邸で開催され、官房長官らも参加した会合が政治活動ではないというのは理解に苦しむ。
仮に違法性がないとしても政治的責任は免れない。野党が求める政治倫理審査会への出席を含め、より丁寧な説明が必要だ。
事態を一層深刻にしているのは、商品券などの金券の配布が安倍政権や岸田政権でも確認され、自民政権の長年の慣行である疑いがあることだ。
石破首相と複数の自民閣僚の政治団体が、個人献金をした人物の住所として企業などの所在地を政治資金収支報告書に記載していたことも明らかになった。
世論調査では「政治とカネ」問題が自民政権下で根絶に向かうかどうかを尋ねる質問に「向かわない」が78・5%に達した。
極めて厳しい数字だ。時代遅れの慣習や悪弊はすぐにやめ、刷新しなければならない。自民議員は党内や永田町の常識を疑い、自らを律する必要がある。
国会では2025年度予算案の24年度中の成立を巡り、与野党の攻防が最終局面を迎えている。
同時に本格化するのは、3月末までに結論を得ることで与野党が合意している企業・団体献金を巡る法案審議だ。
禁止を訴える野党に対し、透明性を高めるとする自民の主張が国民の理解を得られるのか。
高額療養費制度の見直しを巡る迷走ぶりでも疑問符が付いた石破首相の指導力が改めて問われる。
