
◆鉄道ジャーナリスト・渡部さん「大糸線は観光面で魅力的」
鉄道ジャーナリストの渡部史絵さんは、全国各地の路線名の由来を紹介。JR白新線や大糸線についても語った。中でも鉄道ファンの人気を集める大糸線は採算面で厳しい状況が続く。渡部さんは「沿線の魅力は多い」と存続を望む。
-路線名と実態が合わなくなったケースはありますか。
「背景は異なるとはいえ、信越線も一例といえるのではないか。信濃、信州(長野)と越後(新潟)を結んでいたが、北陸新幹線開業後は県をまたぐ区間の並行在来線が第三セクターに移行した。白新線や東武東上線のような当初の構想とは異なる区間で営業することになったパターンとは違うが、もともとつながっていたのに分離されてしまうケースは残念に思う」
-大糸線は糸魚川-南小谷間の存廃が議論されています。
「沿線には白馬などスキー場があり、避暑地として訪れる人も多い。そこと海をつなぎ、北陸新幹線とも接続する大糸線は、観光面で魅力的な路線だ」
-赤字が問題になっています。
「『赤字だから廃止』と結論付けるのは惜しい。改善できる方策は考えらないのだろうか。ダイヤを見直し、糸魚川駅での北陸新幹線との接続を改善するだけでも、利便性は向上するのではないか。東京から白馬へ行くとき、松本経由より速いルートにもなり得る」
-新型コロナウイルス禍の以前は、沿線ではインバウンド(外国人誘客)の取り組みも始まっていました。
「新型ウイルス禍が収束すれば、観光交流は再び盛んになるはず。大糸線は区間によってJR西日本と東日本に分かれ、設備面でも非電化、電化に分かれているなどの課題がある。そこを乗り越え、JR両社と、えちごトキめき鉄道、しなの鉄道が連携して観光列車を走らせるなどの取り組みを考えられないだろうか。観光列車は全国で人気があり、メジャーな鉄道の楽しみ方になっている。沿線住民の積極的な利用も欠かせない」

◎渡部史絵(わたなべ・しえ)鉄道ジャーナリスト。2006年より鉄道の有用性や魅力を発信しようと活動。月刊誌「鉄道ファン」の連載や新聞・雑誌の寄稿など執筆活動を主体に、国土交通省や行政、大学、鉄道事業者にて講演活動などをしている。