被災者を救うために、一刻も早い国際支援が必要だ。軍事政権や武装組織などは内戦を速やかに停止し、救助と支援が安全に届けられる環境をつくるべきだ。

 ミャンマー中部で28日、マグニチュード(M)7・7の地震があった。ミャンマーを縦断する長大な「ザガイン断層」のうち約200キロが活動したとみられ、首都ネピドーや第2の都市マンダレーなどで深刻な被害が出ている。

 これまでに約1700人が亡くなり、負傷者は3千人を超える。被災者の生存率が著しく下がる「発生後72時間」が31日午後に迫る中、倒壊した建物の下などに多数の市民が取り残されている。

 ミャンマー軍事政権は救助と被災者支援に全力を挙げるものの、民主派や少数民族武装組織との内戦で統治能力は弱体化している。重機などの機材も不足しているといい、救助の遅れが心配される。

 まずは内戦を停止し、救出を最優先しなくてはならない。

 軍事政権と内戦を続ける民主派の政治組織「挙国一致政府(NUG)」は、被災地での2週間の停戦を履行すると発表した。政権支配地域でも国際機関の救援活動に協力するという。

 しかし戦況は戦闘能力の高い少数民族武装組織に左右され、実効性は不透明だ。軍政側が空爆を継続しているとの情報もある。

 2021年のクーデター以来、国際的な孤立を深める軍政だが、今回の地震では国際支援を歓迎する姿勢を示している。

 既に友好国の中国とロシア、隣国のインドとタイが救助隊を派遣し、支援物資も届き始めた。

 国連が500万ドル(約7億5千万円)の拠出を決めたほか、日本政府も物資供与を早急に行う方向で調整している。

 国際協力をしっかりと生かすために、軍政は内戦停止をリードしてもらいたい。民主派などの支配地域にも確実に救援と支援を届けることを約束するべきだ。

 地震では、震源から遠く離れたタイの首都バンコクでも、建設中の高層ビルが倒壊した。他の建設現場を含め多くの死者や行方不明者が出ている。

 バンコクで大きな揺れを伴う地震は極めてまれで、気象庁は、揺れが1往復するのにかかる時間が長い「長周期地震動」の可能性を指摘している。地下にある分厚い軟弱地盤が長周期の地震波を増幅させたとみられる。

 注意したいのは、今回の被害が日本にとっても無関係ではないということだ。

 軟弱地盤は日本各地にあり、長周期地震動の影響を受けやすい高層ビルも多い。専門家は南海トラフ巨大地震でも同様の被害を生む恐れがあると呼びかけている。

 他国の地震だと見過ごしてはならない。家具の固定など身近な対策を確認し、教訓を生かしたい。