「踏んだり蹴ったりですこて」。タクシーの運転手がつぶやく。感染禍で大ダメージを負った。ようやく飲食店の営業時間規制が解かれ、年度替わりに飲み客が少し増えたと感じていたのに。今度は燃料のLPガスの大幅値上げという
▼スーパーをのぞけば新ジャガイモが税別88円、新タマネギ200円だ。1個の値札と聞きたじろぐ。「天候不良に燃料高で去年の倍くらい」。店員さんもあきらめ顔だ
▼昨年の消費者物価指数は前年比でマイナス0・2%だった。それが一転、今年3月は前年同月比で1・2%と4年ぶりの高水準という。2月にロシアがウクライナに侵攻し、原油や穀物価格の暴騰が止まらない
▼感染禍に異常気象、戦乱と円安…。すべてが絡み、庶民の生活をせめ立てる。半世紀前の「狂乱物価」騒動を思い出すご年配もいるだろう。この時は第4次中東戦争でオイルショックが起きた。1974年の物価は前年比23・2%高。想像を絶する数字だ
▼「敏速果断な行動をもって対処し、その結果については、責任を取ってまいります」。当時の田中角栄首相は施政方針演説で年金の物価スライド制や所得減税、法人増税を明言し、断行する。その年の賃上げ率は32・9%。物価高をカバーできる成長期だった
▼6兆円以上という今回の物価高緊急対策の中身は給付金など、場当たりな雰囲気が漂う。「新しい資本主義」の道筋も分からない。当時と今の経済環境は違う。でも、難局にあたるリーダーの覚悟が違っては困る。