柏崎刈羽原発6号機(右)と7号機
柏崎刈羽原発6号機(右)と7号機

柏崎刈羽原発6号機で、使用済燃料プールから燃料を引き上げている様子(東京電力提供)

柏崎刈羽原発6号機で、燃料を装てんしている様子(東京電力提供)

 東京電力は10日、再稼働東京電力福島第1原発事故を受け、国は原発の新規制基準をつくり、原子力規制委員会が原発の重大事故対策などを審査する。基準に適合していれば合格証に当たる審査書を決定し、再稼働の条件が整う。法律上の根拠はないが、地元の自治体の同意も再稼働に必要とされる。新潟県、柏崎市、刈羽村は県と立地2市村が「同意」する地元の範囲だとしている。を目指す柏崎刈羽原発柏崎市、刈羽村にある原子力発電所で、東京電力が運営する。1号機から7号機まで七つの原子炉がある。最も古い1号機は、1985年に営業運転を始めた。総出力は世界最大級の約821万キロワット。発電された電気は主に関東方面に送られる。2012年3月に6号機が停止してから、全ての原子炉の停止状態が続いている。東電が原発を再稼働させるには、原子力規制委員会の審査を通る必要がある。7号機は2020年に、6号機は2025年に全ての審査に「合格」した。7号機は2024年6月に技術的には再稼働できる状況が整った。6号機の原子炉に核燃料を入れる装てん作業を始めた。2011年の東電福島第1原発事故後、柏崎刈羽では7号機に次いで2基目で、2週間ほどをかけて燃料集合体872体を入れる。これまで東電が再稼働を優先させるとしてきた7号機は、テロ対策施設の完成が大幅に遅れ、10月には運転ができなくなる。こうした状況も踏まえ、東電は6号機で燃料を装てんすることで実施できる検査などを進め、7号機に代えて再稼働を先行させる準備を加速させている。

 6号機の燃料装てんは、原子力規制委員会が10日午前に東電の作業計画を承認したことを受け、午後1時過ぎに始まった。核燃料を保管している6号機の使用済み燃料プールから原子炉内へ順次移し替えていく。

 燃料を全て装てんした後は、核分裂反応を抑える制御棒の動作確認や、原子炉圧力容器と格納容器の密閉性検査などを行う。

 柏崎刈羽原発6号機は17年末に、福島事故後に設けられた新規制基準東京電力福島第1原発事故を教訓に、原子力規制委員会が新たに策定した基準。原子炉などの設計を審査するために用いる。2013年7月8日に施行された。従来の指針などが見直され、炉心溶融や放射性物質の大量放出といった重大な事故への対策や、地震、津波対策を強化した。原発を再稼働させるためには新基準に適合していることが条件となった。審査は原子力規制委員会が行う。新たに建設される原発にも適用されるほか、既存の原発にも適用される。の適合性審査に合格。規制委が行う再稼働に必要な審査は今年2月までに全て終えた。安全対策工事や設備の状況などを確認する「使用前事業者検査」も一通り終えており、装てん後の一連の検査が順調に進めば、技術的には8月にも再稼働が可能な状態となる見通しだ。

柏崎刈羽原発6号機で始まった核燃料の装てん作業=10日午後(東京電力提供)

 柏崎刈羽原発の再稼働を巡っては、地元の同意が焦点となっている。柏崎市と刈羽村が再稼働に前向きな姿勢を示す一方、花角英世知事は県民の意見を見極めた上で是非を判断するとし、8月まで公聴会や市町村長との対話を行うほか、県民意識調査も今後行う意向を示している。知事が自身の判断を示す時期は依然として見通せない。

柏崎刈羽原発6号機で、使用済燃料プールから燃料を引き上げている様子(東京電力提供)

 東電はこれまで、7号機の再稼働を優先させる考えを強調してきたが、4月末にあった東京電力ホールディングスの決算会見以降、小早川智明社長が6号機の再稼働を先行させる可能性に言及している。

柏崎刈羽原発6号機で、燃料を装てんしている様子(東京電力提供)

◆「実質的な再稼働に等しい」市民団体が抗議活動

 東京電力が柏崎刈羽原発6号機へ核燃料の装てんを始めた10日、原発再稼働に反対する市民団体が新潟市中央区の東電新潟本社前で抗議活動を行った。

東京電力による柏崎刈羽原発6号機への核燃料装てんに抗議する市民団体のメンバーら=10日、新潟市中央区

 「規制庁・規制委員会を監視する新潟の会」など県内3団体のメンバーら約20人が、東電新潟本社前で「抗議」と書かれたプラカードを無言で掲げ、通りを走る車のドライバーらにアピールした。

 また、東電の社長らに宛てた抗議文書を東電社員に手渡し、装てん取りやめのほか、県民の不安と誠実に向き合うことなどを求めた。

 市民団体代表の桑原三恵さん(77)は「核燃料の装てんは実質的な再稼働に等しい。県民の理解を得ていない状況で計画を進めることに疑問を感じる」と東電の姿勢を批判した。

◆「7号機先行」の方針変えるなら、丁寧な説明を

 東京電力が10日に柏崎刈羽原発6号機への核燃料装てんを始めたのは、今後のスケジュールをにらんだ布石と言える。再稼働準備を先行させてきた7号機は、仮に地元自治体の同意があっても10月以降は動かせなくなる。6号機の準備を急ぎ、再稼働の1番手を差し替えていく方針とみられる。しかし、これまで東電は一貫して7号機再稼働を前提に説明してきた。方針を変更するならば...

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