交戦開始から1週間となる。激化する戦闘に米国が参戦すれば、戦火がさらに拡大し、大規模な衝突に発展する恐れがある。

 トランプ米大統領は停戦に導くことに注力すべきだ。米軍の攻撃は断じてあってはならない。

 イスラエルとイランの交戦を巡り、米メディアはトランプ氏が、イランに対する米軍の攻撃計画を承認したと報じた。ただ、イランが核開発計画を放棄するかを見極めるまで実行しないとしている。

 トランプ氏は記者団に、イランに「最後通告」したと述べ、攻撃するかについては「やるかもしれないし、やらないかもしれない」と明言を避けた。

 イランが米との交渉を求め接触してきたとも説明した。話し合いによる解決の糸口を何としても見つけてほしい。

 米国の参戦はイスラエルが要請したと報じられている。

 イラン中部フォルドゥのウラン濃縮施設を破壊するには、米軍が保有する大型の特殊貫通弾と大型爆撃機が必要だからだ。施設は山岳地帯の推定地下80~90メートルに埋設されている。

 これに対し、イラン最高指導者ハメネイ師は「米国による軍事介入は取り返しのつかない結果を招く」と対抗姿勢を示した。中東の米軍駐留基地に報復攻撃する方針を決定したとみられる。

 米軍が攻撃に踏み切れば、イスラエルとイラン両国以外にも戦火が広がり、米兵も含め多くの犠牲者が出ることが十分考えられる。踏みとどまるべきだ。

 気になるのは、トランプ氏が徐々に前のめりになっていることだ。当初イスラエルの先制攻撃から距離を置く姿勢だったが、交流サイト(SNS)への過激な投稿でイランへの威嚇を強めている。

 イスラエルのネタニヤフ首相が自国側に犠牲が出ても、全く攻撃の手を緩めないことにも懸念がある。核施設にとどまらず首都テヘランや空港、石油貯蔵施設、国営テレビなども空爆している。

 ハメネイ師の殺害計画を排除しない考えも示し「戦闘を激化させるのではなく、終結させるものだ」と述べ、イランの体制転換を図ることも否定しなかった。

 在留邦人の安全も心配だ。日本政府は19日、両国からバスで隣国に移動させ退避を始めた。これとは別に、航空自衛隊の輸送機2機をアフリカ東部ジブチに派遣する。速やかに退避できるよう万全を期してほしい。

 国連安全保障理事会は緊急会合を開く。また、英国とフランス、ドイツの外相が、イラン外相と核問題を巡る協議を開催する方針も報じられた。

 イラン、イスラエル両国で多くの市民が亡くなっている。一刻も早く戦火を収め、これ以上犠牲者を出さないために、日本を含め国際社会は結束せねばならない。