東アジアの平和と安定には、関係の強化が不可欠だ。官民による対話と交流を着実に重ねたい。
日本と韓国が基本条約に1965年に調印し、国交が正常化してから、22日で60年となった。
6月に就任した韓国の李(イ)在明(ジェミョン)大統領はカナダで石破茂首相と初の会談に臨み、核・ミサイル開発を続ける北朝鮮問題などを念頭に「より堅固で成熟した関係の基盤」を築くことで一致した。
これまで、歴史認識問題などを巡り、両国関係は「最悪」と呼ばれる時期を繰り返してきた。この節目を、過去を乗り越えて安定した関係を構築する契機にしたい。
戦前戦中に日本は朝鮮半島を植民地支配した。65年の国交正常化に当たり、最大の焦点だった韓国の対日請求権については、日本が韓国に経済協力を行い、「完全かつ最終的に解決された」と確認する請求権協定を締結した。
2015年に両国は、元従軍慰安婦問題の「最終的かつ不可逆的」な解決を確認したが、韓国の政権交代で事実上、白紙化された。
元徴用工訴訟問題では、日本企業に賠償を命じる判決が出され、23年に尹(ユン)錫悦(ソンニョル)前大統領が韓国の財団が賠償を肩代わりする方針を表明した。李大統領もこの解決策を維持する考えを示唆している。
ただ、李氏は歴史認識問題などでかつて日本を厳しく批判してきた経緯があり、今後も融和路線が貫かれるのか気がかりだ。
韓国側が「戦時中に朝鮮半島出身者が強制労働させられた現場だ」とする世界文化遺産「佐渡島(さど)の金山」に関しても課題が残る。
昨年日本側が行った労働者の追悼式に韓国政府の関係者が欠席した。式の内容に不満があったとされる。式は今年も開催が検討されており、韓国側の対応が焦点だ。
韓国側には未来を見据えて判断してもらいたい。
政府間はさておき、民間交流は好調だ。内閣府の24年の調査で日韓関係について「良好だと思う」「まあ良好だと思う」の回答は計51・2%と、前回より増加した。
韓国のシンクタンクの24年の調査でも、日本の印象が「良い」と答えた人は41・7%で、調査を始めた13年以降最も多かった。
食や音楽といった双方の文化に関心が高まり、若者を中心に互いに人気の旅行先にもなっている。24年に日本を訪れた韓国人は推計881万人で、韓国を訪れた日本人は約322万人だった。
人の往来が活発になり、友好がさらに深まることを期待する。
新潟とソウルを結ぶ定期航空路は週3往復運航する。県産日本酒の輸出先としては米国に次いで2番目に多い。本県にとっても観光や経済分野での韓国との交流拡大はメリットが大きい。
日本と韓国は身近な隣国だ。互いの未来のためにも、関係構築を進めたい。
