塩には浸透圧により野菜や魚肉から水分を抜く働きがある。雑菌の繁殖を抑え、食べ物が傷むのを防ぐ。味付け以外でも塩は人の生活と深く関わってきた

▼神聖な存在でもあるとされ、「清め塩」や「盛り塩」は厄よけの力があると信じられてきた。風邪予防に塩水でうがいをしたことがある人もいるだろう。とはいえ、新型ウイルス感染症の予防や治療にどれだけの効果があるだろうか。かなり限定的と言わざるを得ない

▼この病気が爆発的に広がった北朝鮮では、塩水うがいやヨモギの葉をいぶした煙を吸うといった民間療法が推奨されているという。国営メディアでは、こうした手法で回復したという市民の言葉が報じられている

▼民間療法に頼らざるを得ないのは、この国の医療体制が脆弱(ぜいじゃく)なことの裏返しだろう。新型ウイルスについてはワクチンも治療薬も皆無に等しい。感染の有無を調べる検査キットもほとんどないという

▼政権交代したばかりの韓国は医療支援の用意があるとしているが、北朝鮮は受け取る姿勢を見せていない。限られた医療体制や民間療法だけで、この爆発的な感染拡大を抑え込めるものだろうか

▼一方で、凍結されていた原子炉建設を再開した兆候が見られるという。今年に入ってミサイル発射も繰り返しており、核実験再開も懸念される。国民の健康が危機的な中でも、軍備の増強には余念がないようだ。感染拡大の引き金になったのは、先月の大規模な軍事パレードなどの行事だと取り沙汰されている。

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