「書店にいるとトイレに行きたくなる」。こんな悩みが本の専門誌「本の雑誌」に載ったのは1985年のことだ。投稿者の名前から「青木まりこ現象」と呼ばれ、今も週刊誌やネットで折々取り上げられる

▼専門家らが原因を探る。「インクのにおいが誘発する」「並んだ背表紙を見ることが刺激になるのではないか」。真相は謎だというが、30年以上も議論が続くのは、それだけ書店で同じ体験をした人が多い表れだろう

▼そんな経験をする機会も遠のいているのか。全国の書店が20年間で半減したとの統計がある。県内でもこの春、新潟市南区で150年の歴史を有する書店が閉じたと、本紙新潟面で知った

▼地元では「文化の発信地」と親しまれた店だという。しかし、近年は大型書店やネットとの競合に苦しんだ。店主は「『まちの本屋』の時代は終わったような気がする」と振り返る

▼写真で見たその店は、幼い頃に通った書店とよく似ていた。漫画の発売日には子どもが駆け込んだだろう。表紙に触れ、これぞという1冊を選び出す中高生もいたのではないか。本を五感で味わえる大切な場だっただろうと思いを巡らせた

▼同じ南区にあるギャラリーで先日、長岡市から来た移動書店に出合った。8年前から500冊ほどを車に積み、方々へ出向いているという。「人が来ないなら、こちらから行こうと思って」と店長。発信にも力を入れ、ファンが増えてきたと聞いた。形は変わっても「まちの本屋」は続いていくと信じたい。

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