本県をはじめ多くの地方にとって極めて重要な課題が人口減少だ。働き手の減少は各種産業の衰退につながりかねない。地方の活力をどう取り戻すか、各党は考えを明確に示してほしい。
地方から首都圏への若者の流出が進んでいる。進学や就職を契機に20代前半の多くの若者が首都圏に移り住む傾向が続く。
2024年の人口移動報告では、転入者数が転出者数を上回る「転入超過」は東京、埼玉、千葉、神奈川の4都県で13万5843人に上った。本県は5782人の転出超過で、全国で9番目に多い。
どうすれば地方からの若者の流出を止められるのか。
地方の人口減少の克服に向けて政府は14年に地方創生を政策テーマに掲げた。石破茂首相が最初の担当大臣として先頭に立った。
しかし、その後も、首都圏への一極集中は続いている。効果が十分でないのは明らかだ。
各自治体は危機感を募らせている。全国知事会は昨年、急速な人口減少により、医療・福祉、買い物、教育など生活サービスの提供や、公共交通、インフラの維持管理が困難になるとする緊急宣言を決議した。
政府は6月に地方創生の今後10年の指針となる基本構想をまとめ、東京圏から移住する若者を倍増させる目標などを掲げた。
ただ、政策の具体化はこれからで、実現可能性は未知数だ。
参院選で各党は公約に多岐にわたる地方活性化策を掲げた。
自民党は居住地以外の地域に継続的に関わる関係人口を増やし、活性化につなげようと「ふるさと住民登録制度」の創設を挙げた。
地域がそれぞれの実情に応じた施策に、より自由に取り組めるように、財政支援や権限の委譲を掲げる党も多い。
与党の公明党は地方創生推進交付金の十分な確保、野党の共産党、国民民主党も地方自治体への各種交付金の拡充を掲げた。
日本維新の会は地方自治体への権限委譲を進めるとした。
地域住民の生活に直結する医療・福祉や公共交通に目を向けた公約もある。
立憲民主党は公立病院など赤字となっている地方の医療機関への支援強化を行うとし、れいわ新選組は公共インフラと公共サービスの拡充を目指す。
参政党は観光の国内需要喚起による地方経済活性化を訴える。
各党とも、地方活性化に向けた取り組みを進めるべきだという方向性は同じで、違うのはそのためにどうアプローチするかだ。
地方が抱える課題に対し、より具体的な対策を提示しているのはどの政党か、地方に暮らす有権者として、見極めていきたい。