今春、没後30年を迎えたシンガー・ソングライターの尾崎豊は、昭和50年代が終わろうとしていた1984年の暮れ、新潟市でコンサートを開いている。18歳でデビューした翌年のことだった

▼小雪が舞う中、今はなき新潟市公会堂の前には入場を待つ列ができた。当日券も売られていた。「10代のカリスマ」などと言われるようになるのはまだ先のこと。アルバム「十七歳の地図」の楽曲を中心に叫ぶように歌った

▼大人たちへの抵抗や自由への渇望を、等身大の歌詞で言語化してくれた歌い手だった。「今のままの自分でいいのか」「あらがってみろよ」。そんなメッセージが多くの中高生の胸をうずかせた

▼没後30年で軌跡を振り返る追悼企画がさまざま組まれた。生き急いだ人生だったのか。覚せい剤取締法違反で逮捕されるなど身を落としもした。92年に26歳で早世すると、葬儀には4万人が全国から訪れた

▼今どきの中高生が、かつての若者たちのように共鳴するとも思わない。けれど、身なりや思考はスマートになったように見えても、不安定だったり、向こう見ずだったりする青年期の実像はきっと昔も今もそれほど変わらない

▼成人年齢引き下げで、18歳から大人の自覚や責任が求められるようになった。今月の知事選で、初めて選挙権を行使する人もいるだろう。大人になる過程で、自分自身や社会の不条理を正視し、迷ってもがく時間が担保されていることを願いたい。そうした時間に寄り添ってくれる歌があるといい。

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