
新潟県産材料を使ってソバこうじを造る醸造家の今井翔也さん=大阪府八尾市
日本酒の酒蔵数が89と全国最多の新潟県は「淡麗辛口」の酒どころとして全国に名をはせる。健康志向の高まりや高齢化という時代の流れを受け、アルコール消費量は減少傾向にある。そうした中、伝統的酒造りが国内外で注目され、造りや味わい、売り方、楽しみ方などの面で新たな動きが出てきた。重点企画「NEXTコンテンツ潮流」第2シリーズでは、新市場を醸そうとする挑戦を追う。(7回続きの1)
◆「クラフトサケ」生みの親が目指す「日本酒を世界酒に」
6月上旬、大阪府八尾市で珍しい酒造用の「ソバこうじ」を造る作業が行われた。醸造家の今井翔也さん(36)が借り受けた専用施設内には、ほんのりとソバの香りが漂う。このこうじにしていたソバは新潟県産。装置に広げたソバの実を慎重にかき回し、両手ですくって香りを確かめていた。
酒造業界は今、原料米高騰に揺れる。「コメがもし取れなくなったら酒蔵はつぶれるかもしれない」。今井さんは危機感を口にする。
日本酒の技術をベースに、果物やハーブといった副原料を加えるなどして醸造した新ジャンルの酒「クラフトサケ」。今井さんはその生みの親と言われる。
京都を拠点に活動する今井さん。醸造技術は柏崎市の阿部酒造で磨いた。今は自身の酒蔵を持たず、工程ごとに施設を借りる。「日本酒を世界酒に」という思いを胸に醸造を続けている。
「各地で愛されている素材で酒を造る可能性を広げれば、コメが取れない地域でも造り手は増える。いろんな素材が支え合い、文化は続いていくはずだ」
若い作り手が日本産の酒の未来を切り開こうとしている。
◆大麦、ソバ、サツマイモ…コメ以外のこうじに着目
県産日本酒の国内出荷量は減少を続けている。県酒造組合(新潟市中央区)のまとめでは、...
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