子どもたちに人気の作家、令丈ヒロ子さんが手がけた「パンプキン!」という児童書がある。少しおいしそうな響きもするけれど、副題に「模擬原爆の夏」とあるように先の大戦に関係する物語だ
▼米軍は広島、長崎に原爆を落とす訓練のため、終戦間際の夏、18都府県に模擬原爆を投下した。形や色がカボチャに似ており「パンプキン」とも呼ばれた。7月26日に柏崎市、阿賀町に落とした。県内では長岡市も標的になり、合わせて6人が亡くなった
▼「パンプキン!」は模擬原爆が投下された大阪市に住む女の子が主人公だ。初めは戦争に関心はなかったが、家の近くに慰霊碑があると知る。模擬原爆を調べているいとこにも徐々に引かれ、夏休みの自由研究にしようと壁新聞を作った
▼長崎ちゃんぽんをみんなで作って食べるシーンが印象に残る。「肉も魚介も野菜も、いろんな材料がまじりあって、うまいひとつの味をみんなで作り上げる。そんな世界になったらエエなあ」。腕を振るった祖父が、長崎は昔から多くの国の人が住み、それぞれの文化や習慣を尊重してきたと孫たちに語る
▼長岡の投下地にも碑がある。先日訪れると鳥のさえずりが聞こえ、遠くの道路には車が行き交っていた。畑仕事の姿も目に入る。平和をかみしめる
▼終戦から80年となる。戦争関連の碑は各地にあり、企画展を行う博物館もある。当時、何があったか、子どもらに知ってほしい。夏休みは良い機会となる。目を向けるきっかけをつくってあげたい。