ジャンルも、監督や俳優の顔ぶれも知らず映画を見始めることがある。途中で「当たりだ」と直感した時は全身が興奮に包まれる。物語が終わってしまうのを惜しみながら一分一秒をかみしめる

▼対価を払わなくても著作物の内容が分かる「ネタバレサイト」が問題化している。映画を10分程度に編集し、結末までの筋を明かす「ファスト映画」や、読まなくても漫画の内容が分かる投稿が横行し、著作権法違反に問われている。コンテンツ産業の破壊につながると危惧されている

▼そんな環境に慣れた若年層を中心に、ドラマや映画の「早送り視聴」も広がる。編集者でライターの稲田豊史さんによれば「時間がもったいない」とセリフのないシーンや情景描写を飛ばしたり、倍速で再生したりするという

▼定額制配信が普及し、話題作のポイントを手っ取り早く押さえたい心理は分かる気もする。だが、ミステリーの結末を知りたいという声さえあるというから驚かされる。鑑賞の楽しみが減ってしまわないか心配になる

▼若い世代には感情を揺さぶられることをストレスと捉え、予想外の展開を不快に感じる傾向があるという指摘を耳にした。そうした心の動きこそが、文字通り感動につながると思うのだが

▼沈黙する俳優の表情や寂れた風景のカットに、たまらない味わいが感じられることがある。それらを飛ばすことこそ、もったいない。作品が使い捨てのように扱われる時代にあっては、そんな思いも聞く耳を持たれないだろうか。

朗読日報抄とは?