非常時への備えの拙さが露呈した。日々十数万人が来場する会場の運営としては心もとない。安全面の再点検を求める。
大阪・関西万博の会場である人工島・夢洲(ゆめしま)に来場者約3万人が一時足止めされるトラブルが起きた。大勢が帰宅できなくなり、会場内で一夜を過ごした。
会場につながる唯一の鉄道路線となっている地下鉄が停電によって運転を見合わせたことで、帰宅困難者が発生した。
一義的には交通網の問題だが、気分不良や熱中症の疑いで会場から36人が救急搬送された背景に、運営のまずさがうかがえる。
午後9時半に運転見合わせになると、万博を運営する日本国際博覧会協会は「災害に準じた対応」を取ったという。
来場者向けに施設を開放することを決めたが、実際に開放したのは運転見合わせから約2時間たってからだった。
備蓄品の提供は一夜明けた午前4時以降になってからというから、協会の対応が遅い。
開放された施設も冷房のない半屋外の休憩所などが含まれていた。夏開催のリスクに目配りができていないのではないか。
備蓄から提供されたのも水のペットボトル千本だけだった。お粗末と言わざるを得ない。
開幕直後の4月にも地下鉄トラブルで駅周辺に約4千人が滞留する事案が起きていたにもかかわらず、対策が具体化されていなかったのは協会の怠慢である。
万博担当相は15日、「反省すべき点がたくさんある」と述べた。
協会は、巨大地震などで孤立する事態の備えはあらかじめ防災実施計画に明記していたというが、今回の対応を見る限り、非常時への備えに不安を抱く。
アクセス手段が乏しい人工島という特殊事情を意識した危機管理が不可欠だ。
もともと万博会場は、アクセスが橋とトンネル、地下鉄の3ルートに限られており、交通面の弱点が懸念されていた。
足止めされた来場者からは「何が起きているか分からなかった」などと情報不足が指摘された。
7月にカムチャツカ半島付近で巨大地震が起きた際も、来場者に津波注意情報を伝えたのは到達予想時刻後だった。対応が後手後手では困る。
来場者を増やすことばかりに注力していないか。閉幕まであと約2カ月、あらゆる想定を巡らし、非常時対応を整えるべきである。