本来なら不断に心がけることだが、せっかくの機会にあらためて災害との向き合い方を確認しておきたい。きょうは102年前の関東大震災が発生した日に由来する「防災の日」である
▼先月の本紙に載った民間調査会社と損害保険会社の全国調査では、物資の備蓄など災害に備えた対策をしていない家庭がいずれも全体の約4割に上った。災害が頻繁に発生し常態化する「災間社会」を生きていると言われる中で、この数字をどう捉えるか
▼自治体の防災対策には万全の備えを求めたいが、道半ばのようだ。全国市区町村の半数で、避難所の居住面積とトイレ数が政府の指針を満たしていないことが分かった。災害関連死を招きかねず、放置できない問題だ
▼南海トラフ巨大地震の被災想定都府県では、予兆を受けた事前避難の対象地域の指定が、進んでいないことも明らかになった。事前避難は1週間とされるが、そもそも推計される約52万人もの市民がどこへどう避難するのか
▼命を守る施策は行政の大目標のはずだが、対策には資金も人手も要る。福祉や医療、教育など身近な政策課題とどう優先順位を付けるか、簡単に解は出せない。コストを踏まえたバランスの上に社会は成り立つ
▼安全安心を安易に他人に委ねるまい。一人一人が想定される災害のリスクを把握する。その上で正しく恐れる。でき得る限りの準備を怠らず、諦めない。そんな防災を心がけたい。万が一のための用心ではない。災害は必ず起こるものだと考えたい。