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 昭和30年8月、まだ高校生だった石森(石ノ森章太郎)が、夏休みを利用して上京してきた。ボクらも一緒に、あこがれの手塚治虫に会いに行くことにしたんだ。 

 そのとき、“神様”は「マンガ家のアパート」で有名なトキワ荘を出て、豊島区雑司ヶ谷に住んでいた。部屋は締め切り間際で、殺気立った編集者がいっぱいでね。それでも手塚先生はニコニコして「君たちマンガ家になりたいのかい」って応対してくれるんだよ。

 もう緊張して「できればなりたいです」なんて、あいまいな返事をしちゃった。それでも手塚先生がアドバイスしてくれるんだ。

 「マンガばかり書いてちゃダメだよ。一流の映画を見て、一流の音楽を聴い...

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