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 石森(石ノ森章太郎)らの活躍の陰で、ボクはパッとしなかった。毎晩、ギャグを一本考えないと寝ないって決めて、努力はしていたんだけれど、ある時、単行本を40ページ書いたところで壁にぶちあたってしまった。

 食事はキャベツと水ばかり。月3千円の家賃も4カ月たまって「赤塚、今月いっぱいで出ていけ!」って大家に怒鳴られてた。

 もうマンガなんてやめちまえって、新宿の「ラ・セーヌ」という喫茶店に行って、一日中ボーイの動きを見ていた。ここに住み込みで働こうって思ったんだ。

 その晩、寺田ヒロオの部屋に行って打ち明けたよ。そしたら寺さんは「今書いている原稿を持っておいで」って静かに言うんだ。ボ...

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