党の再生をかけた選挙である。責任ある「国民政党」たり得るか、厳しい目が注がれる。問われるのは、政治を前へ進める力だ。
首相の座をたぐり寄せる戦いでもある。これからの日本について骨太な論戦を求めたい。
石破茂首相の退陣表明に伴う自民党総裁選が22日、告示された。小林鷹之、茂木敏充、林芳正、高市早苗、小泉進次郎の5氏が届け出た。いずれも昨年の総裁選に出馬した40代から60代だ。10月4日に投開票される。
自民、公明両党は衆参両院で過半数を割り込んでいる少数与党だが、野党各党が首相指名選挙で一本化する機運は乏しく、自民総裁選を勝ち抜いた候補が首相になる可能性が高い。
自民にとって、この総裁選が出直しの一歩になる。大敗した参院選の総括で党自らが示したように、国民との間に起きている意識の乖離(かいり)を解消する転換点にしなければならない。
棚上げされたままの物価高対策を注目したい。各候補は、参院選時に自民が掲げて不評だった2万円の一律給付に代わり、給付付き税額控除や年収の壁引き上げなどの主張を展開している。
石破政権は、数多くの政策協議が実らずに終わった。先の通常国会では、懸案であった選択的夫婦別姓も、基礎年金の底上げも先送りされた。
「政治とカネ」では企業・団体献金の扱いも持ち越し、国民は不信感を募らせた。
野党と折り合いをつけ政策を実現させるのが与党の責務である。新総裁は多様な野党と対話を重ねる交渉力が不可欠だ。
野党とどう連携し、政権を安定させるか、枠組みを候補は示すべきである。決められない政治に終止符を打たねばならない。
政策課題は多い。生産者、消費者ともに安心できる農政への転換が求められている。描くコメ政策を語ってもらいたい。
本県にとっては、原発との向き合い方も重要になる。エネルギー政策を明確にするべきだ。
人口減による社会の停滞にどう歯止めをかけるのか。地方の活力に関わるテーマだ。議論が深まることを期待したい。
懸念するのは、旧派閥の影響だ。候補が続々と元領袖(りょうしゅう)を訪ね、協力を求めたとみられる。
派閥裏金事件に端を発した党勢低迷が続く中、派閥政治と決別できぬままなのではないか。党が打ち出した「解党的出直し」からは遠い姿がうかがえる。
石破降ろしに至った党内の勢力争いが、国政の遅滞を生んでいる。それが国益を損ねているのは明らかである。
5氏は国民に向け、大いに国家観を語ってもらいたい。党の存在意義をかけた論戦に、私たちも耳を澄ませたい。