デジタル化した作業日報を見ながら意見交換する小山公一社長(左)と三条信用金庫の刈屋直利本店長=三条市
デジタル化した作業日報を見ながら意見交換する小山公一社長(左)と三条信用金庫の刈屋直利本店長=三条市

 中小企業や地域住民を支える信用金庫・信用組合がもがいている。人口減少に伴う地域経済縮小が懸念される中、逆境を打開しようと顧客と共に課題解決を模索する。生産性向上に向けたDX支援や、営業地区の拡大、合併による経営基盤強化も進む。変革期に立ち向かう県内の信金・信組の取り組みを追った。

 パソコンの画面に表示された棒と折れ線の複合グラフ。ペンチやニッパーの生産実績と目標との差が一目で分かる。作業工具メーカーのスリーピークス技研(三条市)は4月、紙だった作業日報をデジタル化した。

 同社は自社ブランド「3.peaks(スリーピークス)」を展開する。自社商品は200種類以上。業者用から一般用まで幅広い工具を製造し、国内外で販売している。ニーズに合わせた製品開発で品種が増えた一方、少品種に比べ生産計画の策定が複雑になる。

 効率的な生産を進める上で、こうした課題をどう解決していくか。スリーピークス技研のデジタルトランスフォーメーション(DX)に伴走したのが、三条信用金庫(三条市)だった。

◆信金職員のデジタル知識高め…取引先に“還元”

 ことし4月、作業日報をデジタル化したスリーピークス技研(三条市)。デジタルトランスフォーメーション(DX)に取り組んだ意図について、小山公一社長(42)は「生産性を上げるため、各工程で指標となる作業時間などをデータで把握したかった」と説明する。

 それまでは紙の作業日報を使用しており、作業時間などの把握は経験に頼る部分が大きかったという。

 デジタル化により、作業データの自動集計と可視化を実現し、現場の状況把握が迅速化した。データの蓄積を進めて、生産計画の策定や人員配置に活用。原価管理などへの応用も視野に入れる。

 スリーピークス技研と、そのDX化に伴走した三条信用金庫(三条市)は、2024年度の県のDXモデル企業創出支援事業に参加し、取り組みを進めた。

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 ものづくりのまち、燕三条地域に根を張る三条信金。取引先は製造業が多く、貸出金の構成比(25年3月末)は、個人と地方公共団体を除くと、製造業が16・6%で最も高い。

 急激な円高ドル安の引き金となり、輸出産業が打撃を受けた1985年のプラザ合意から40年。幾度もの困難を乗り越えてきた産地はいま、新たな課題と向き合っている。人口減少と少子化に伴う人手不足。後継者不在も深刻で、経営者は賃上げへの対応も求められている。

 「こうした課題を解決するには...

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