北朝鮮帰還事業の様子=1961(昭和36)年の映像「昭和100年の日報ニュース」
「社会主義はどういうものなのか、自分の目で確かめてみたい」。川崎栄子(83)が北朝鮮に渡ろうと決意したのは1960年、まだ朝鮮学校の高級部3年の時だった。
川崎は42年、在日コリアン2世として京都府南部で生まれた。戦後の混乱をくぐり抜けて活発な子として育ち、周囲の薦めもあって日本の高校に当たる朝鮮学校高級部に特待生として進学した。
運命の分かれ道はここだった。教師たちはそろって社会主義の素晴らしさを説き、北朝鮮を「地上の楽園」と...
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