まだ赤ちゃんが手をにぎにぎしているほどの大きさだ。緑の粒々がぎゅっと固まっている。雨が降る度、つぼみが膨らむようなアジサイを軒先で見入る。小さな拳をいつパッと開いてくれるだろうか

▼新潟市の昨年の開花は梅雨入り約10日後の6月22日、平年より1日早い。手まりのような花々は「がく」が発達したものだ。手元の生活暦にアジサイのおまじないが紹介されていた

▼言い伝えや方法はさまざま。玄関、トイレなどにつるす。それで厄よけや魔よけ、商売繁盛、恋愛成就などをかなえる。願いは万能で「何でもござれ」だが、要所は逆さまにつるすこと。この花は「七変化」とも呼ばれ、青から赤紫などへと色が移り変わる

▼だから逆さまにつるして、病などが移らないように縁起を担いでいるようだ(本間美加子「日本の365日を愛(いと)おしむ」)。梅雨時のおまじないでは「てるてる坊主」も忘れてはいけない。「あした天気にしておくれ」と窓際などにつるす

▼アジサイと同じく元来は逆さづりで、願いがかなったら元に戻してあげたともいう。「運動会を中止に」。駆けっこが苦手な子どもが雨を祈り、逆さまにつるす「あめあめ坊主」の風習もある

▼周囲を見渡せば物価高騰が加速する。1万品を超す食品の値上げラッシュが年内続く。夏の参院選では台所からの嘆きを一票に託したい。それはそうとして、値上げを防ぐおまじないはないものか。台所で買い物バックを逆さづりにする。こんな手は通用しないだろうな。

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