作家の市川沙央さんによる小説「ハンチバック」に、国際的な反響が広がっている。2023年に芥川賞を受けた同作は、市川さんのデビュー作。フランスの文学賞メディシス賞(外国小説部門)の最終候補になり、英国際ブッカー賞や全米図書賞翻訳文学部門の候補にも。いずれも受賞は逃したが、25の国と地域で翻訳が決まるなど、勢いは止まらない。支持の背景には、「健常者」である近代知識人がつくり上げてきた価値観を揺るがす、鋭い問題提起がある。

 市川さんは1979年生まれ。難病「先天性ミオパチー」のため人工呼吸器や電動車椅子を使う生活の傍ら、執筆を続ける。難病の「私」が主人公の「ハンチバック」で文学界新人賞を受賞してデ...

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