国内外の情勢から身の回りの状況まで、自分の理想とはどんどんかけ離れて進んでいくことにうんざりすることがある。「世界は悪くなる一方だね」などと、友人と愚痴を言い合ってはため息をついたりしていた

▼先月末の本紙読書面「にいがた人の本棚」が印象深かった。佐渡総合病院長の佐藤賢治さんがスウェーデンの医師らの著書「FACTFULNESS(ファクトフルネス)」を取り上げていた。「世界に対する私の解釈は根拠に基づいているのか、思い込みではないのか」と問いかけてくる本だという

▼本は「いくらかでも電気が使える人は、世界にどのくらいいるでしょう?」など13のクイズで始まる。3択の答えが用意されており、例示した設問の選択肢は「20%」「50%」「80%」。正解がおわかりだろうか

▼世界の貧富は固定的だと思い込み、最小値を選んで見事に間違えた。女性や環境、格差などを問う全13問中、四つしか正答できなかった。本が示すデータでは、世界は格段に進歩していたのに

▼中には「?」と感じる記述もあったが、少なくとも「世界は悪くなる一方」ではないことがわかった。偏らずに世の中を見ているつもりだったが、思い込みに強くとらわれていた

▼世界的なベストセラーになったこの本を、当初は図書館で借りるつもりだった。新潟市内の図書館へ足を運ぶと、なんと予約が22人! 結局購入したが、世界を正しく見たい人がこんなにいることに、世界は捨てたもんじゃないと思い直した。