四季折々の松之山の表情を楽しめるひなの宿ちとせの露天風呂=十日町市松之山湯本

 十日町市の山あいにある松之山温泉は、1本の小道沿いに温泉旅館や土産屋、飲食店が並ぶこぢんまりとした温泉街だ。1906年創業の「ひなの宿ちとせ」は、効能豊かな温泉と雪国風土に根差した食事、ゆったりと流れる時間を楽しめる。

 「旅館は食べ物や見どころなど、土地の価値や長所を伝えるショールーム」
 こう強調するのは、運営する千歳館の社長で4代目の柳一成(かずなり)さん(60)。宿の源泉は、1200万年前に地下に閉じ込められたとされる海の水。草津温泉、有馬温泉と並ぶ「日本三大薬湯」に数えられ、「温泉基準成分の15倍。塩分濃度が高く、肌はしっとりとして湯冷めしない」と自負する。最新の源泉は98度で地上に湧出し、熱は発電や消雪パイプにも使われる。柳さんは「まさに土地の恵み」と力を込める。

ひなの宿ちとせのフロント=十日町市松之山湯本

 食事は地元素材にこだわる。コメは全て松之山郷の棚田米コシヒカリ。もみ殻を燃料に「ぬか釜」で炊き、料理の一つとして塩にぎりで味わってもらう。燃え殻は棚田に戻して融雪と土壌改良に使い、コメを育む里山の循環が生まれる。

 創業から、骨休めで滞在する近隣の農家ら湯治客を顧客にしていたが、...

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