東京女子医大救急医学分野教授、森周介さん
 東京女子医大救急医学分野教授、森周介さん

 119番通報による救急車出動が全国どこでも無料で受けられる仕組みは、国民皆保険と並ぶ日本の医療制度の象徴である。急病や事故の際、誰もがためらわず救急車を呼べるこの制度は、命を守る「最後のセーフティーネット」として定着してきた。しかし近年、制度の持続可能性を巡る議論が静かに、だが確実に高まりつつある。

 救急出動件数は増加の一途をたどり、2023年には全国で760万件を超え過去最多となった。約半数は軽症例であり、重症患者の搬送が遅れる事態も生じている。総務省消防庁によれば、現場到着までの平均時間は10分で20年前より3分以上長く、心肺停止や重症外傷など一分一秒を争うケースでは生存率に直結しかねな...

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