注意情報が終わっても、命を守る備えを徹底したい。災害は、いつ起きるか分からないという意識を持ち続けたい。

 政府や自治体のこの間の対応を検証することも必要だ。

 政府は、北海道から千葉県の7道県182市町村を対象に初めて発表した「北海道・三陸沖後発地震注意情報」に伴う「特別な備え」の呼びかけを終了した。

 青森県東方沖で8日にマグニチュード7・5の地震が発生し、気象庁は日本海溝・千島海溝沿いで巨大地震発生の可能性が平常時より高まっているとしていた。

 対象地域には、通常の生活を続けながらも、避難ルートや備蓄品を再確認し、津波警報などが発表された場合にすぐ避難できるよう備えることが求められた。

 1週間にわたって緊張を強いられた対象地域の人たちは、ひとまずほっとしたことだろう。

 ただ、この地域では過去にも大きな地震が繰り返し起きている。呼びかけが終了すれば安全ということではない。日常生活や備蓄の見直しを進めなければならない。

 発表後に東京大大学院教授らのチームが実施したインターネット調査では、対象地域で注意情報を見聞きした人は74・8%に上り、認知度が高かった一方で、19・7%の人が「何も行動はとらなかった」と回答した。

 具体的にどんな備えをするべきか分からなかったとの指摘もある。政府の周知が十分だったのか精査する必要がある。

 イベント開催などで試行錯誤もあった。2024年に南海トラフ地震臨時情報が発表された際に混乱したため、一部の自治体などで対応を事前に整備する動きが広がった。各地でも参考にして検討を進めてほしい。

 大きな課題となったのは寒さ対策だ。屋外への避難時や停電になった場合、冬の寒冷地で長時間寒さにさらされれば命に関わる。

 自治体は避難所に暖房器具や毛布など寒さ対策の備蓄品があるか見直す必要がある。家庭でも防寒着やカイロを備えておきたい。

 今回の地震発生後、北海道や東北の各地で津波から逃げようとする車の渋滞が発生した。

 多くの自治体は原則徒歩での避難を呼びかけているが、高台まで距離がある地域の人や、障害者や高齢者ら車でしか避難できない人は少なくない。

 どうすれば効率的に避難を進められるのか、各地の事情を踏まえて考えておかねばならない。

 高齢者や障害者が暮らす施設の災害対応強化も求められる。福祉の現場は慢性的な人手不足で、施設だけでは対応に限界がある。

 専門家は、地域住民を巻き込み災害発生時に協力してもらえる体制を構築するよう呼びかける。

 いざという時に備え、日頃から地域で意思疎通を重ねたい。