日々の新聞には気が重くなるニュースが多いけれど、たまらなく明るい気持ちになる特集が先ごろの紙面に載った。「いきいきわくわく科学賞」の受賞作品を紹介していた。小中学生が探究心の赴くままに観察や実験をした成果が目を引く
▼リンゴの部位による甘みの違いを解明したり、ゆで卵の殻の中の謎に迫ったり、ユニークな視点で根気強く取り組む姿勢に感心した。仮説を立てて研究に臨み、数値化して客観性を高めるなど、科学の基本にも忠実だった
▼上越市の有田小3年田中稀子(きこ)さんは「研究には喜怒哀楽がいっぱい詰まっている」ことに気付いたという。十日町市の西小5年阿部優(ひろい)さんは「この研究が誰かの役に立てばうれしい」と思うに至った。「研究対象に対する愛情」を感じ取った審査員もいた
▼わくわくする発想は、きっと時間に追われるように過ごしていては生まれない。常識を疑うセンスや関心事を突き詰めようとする意欲は、日々の余白があってこそ芽吹くのだろう
▼アニメ作家の宮崎駿さんは以前、子どもの不思議な才能と教育制度について語った。〈子どもは向こうから来る車には気がつかないけど、道の向こうに落っこってる輪ゴムには気がつく。それを輪ゴムを見ないで車ばっかり気をつけろというふうな教育をしている〉(宮崎駿「出発点」)
▼道を渡って輪ゴムを手に取り、引っ張ったり飛ばしたり。わけの分からぬ遊びを考えつくかも。それを道のこっち側で見守ってあげられたらいいのだけれど。
