平成の初めごろ、大事MANブラザーズバンドが歌う「それが大事」という曲がはやった。当時から意味が分かりにくい歌詞があった。〈ここにあなたが居ないのが淋(さび)しいのじゃなくて/ここにあなたが居ないと思う事が淋しい〉。恋愛の歌かと思ってきたが、身内の弔事を重ねて、別の解釈が浮かぶ

▼さびしいのは今あなたに会えないことではなく、もうこの世界に存在していないとかみしめること-。そんな意味ではないかと。歌詞には〈高価な墓石を建てるより/安くても生きてる方がすばらしい〉という一節もあった

▼普段は離れていても、たとえ病気や障害で意思の疎通が図れなくても、生きていると思えばこそ心の支えにもなる。もういなくなったんだと思い知る喪失感は、時間をおいてひたひたと押し寄せる

▼長嶋茂雄さん、村山富市さん、いしだあゆみさん…。今年も多くの人が鬼籍に入った。俳優であれ、作家であれ、スポーツ選手であれ、同じ時代を歩んだ人の訃報は、しみじみとさびしい

▼年が明けると、旅立った人をいや応なく過去の中に閉じ込めてしまうような心持ちがするが、作家の柳田邦男さんは「死後生」という観念を持つ。対談本で息子に先立たれた経験も踏まえた実感として語っていた

▼人は一生を終えても、残された者の「心の中で生き続ける」のみならず、その生きざまや言葉が、見送った人々の生きる指針や糧になることで「新たな人生を豊かに膨らませている」のだという。そんな考え方もある。

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