「『殺された側』から『殺した側』へ、こころを伝えるということ」
 「『殺された側』から『殺した側』へ、こころを伝えるということ」

 読み進むと、胸が押しつぶされそうになる。ノンフィクションライターの著者が、2023年に新設された「被害者等心情聴取・伝達制度」などを利用した人たちを取材。犯罪加害者から心の傷をえぐられるような言葉を受けながら、それでも、制度の意味と向き合おうとする姿を記録した。

 この制度は、刑事事件の被害者や遺族の思いを刑務所や少年院を介して受刑者らに伝える仕組みだ。各施設の担当官が被害者らと面談して書面を作成、加害者に読み聞かせる。被害者側が希望すれば、受刑者らの返答を受け取ることもできる。

 本書が指摘するように、刑が確定すると加害者は「闇の奥に消え入るように」収容されて被害者との接点がほぼ無くなる。新制...

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