いつからか、三が日に行っていた初詣が「見るもの」になった。寒さでおっくうになり、つい、寝正月を決め込んでしまう。テレビのニュースで無病息災を祈る家族連れの笑顔を見ながら、こたつの中で手を合わせる
▼そのくせ、街に正月気分が残るうちにおみくじを引かないとどこか落ち着かない。来たる一年がどんな年になるのか、神さま仏さまに聞いてみたい。自身の願いがかなうのかどうか、確認する意味合いもある
▼今の形式のおみくじは江戸時代以降に広がったとされる。力を持った人だけが得ることのできた「お告げ」を誰もが受け取れるようになった。初詣の浸透に伴い、社寺でおみくじを引く風習も浸透した(平野多恵「おみくじの歴史」)
▼くじを開く瞬間の胸の高鳴りは年を重ねても変わらない。凶が出た時の衝撃が記憶に残る人もいるだろう。文豪の永井荷風は浅草の観音さまにお参りに行くと、必ずおみくじを引いたという。凶が出ると大吉が出るまで引き続け、肌身離さず持っていた
▼学業、恋愛、就職、転居…。人生のステージによって関心を寄せるテーマも変わる。思えば真っ先に健康と金運に目が行くようになったのと、三が日に初詣に行かなくなったのは同じころだったような
▼天変地異のない、穏やかな年に。そして、今年こそ地球上から争いがなくなる年に。あまたの人の願いに己の分も乗せて神仏に託す。〈初みくじ大国主に蝶むすび〉平畑静塔。2026年が動き出した。さて、ご託宣やいかに。
