お雑煮、きな粉や磯辺焼き。年明けから、たらふく食べた方も多いだろう。餅である。「正月に餅というのは日本人のアイデンティティ」。エッセーでそう言い切ったのは、作家の中島らもさんだ

▼20代で会社をやめ、朝から酒を飲む生活を送った。一転、再就職を期したのは、妻の「正月の餅が買えない」という一言がきっかけだった。それほどお好きなら、新潟産も口にしたのでは。切り餅・包装餅は本県がトップシェアを誇る

▼県内企業は1957年ごろ餅製造を始めた。当初はカビとの闘いに苦しんだ。63年には多数のメーカーが主食扱いの餅には許可されない防腐剤を使ってしまい、食品衛生法違反に問われる事件も起きた。県餅工業協同組合の20周年記念誌が伝える

▼業界は事件の教訓を飛躍の礎にした。県の機関に依頼してソーセージ型の餅を生み出す。塩化ビニールで密着包装し、熱湯殺菌することで防腐剤は不要になった。さらに各社が板餅や包装生餅を開発し、市場を開拓した

▼鏡餅でも工夫が続いた。大きな餅ではなく、鏡餅の形の容器に個包装の餅が入っている商品が登場した。切り分ける手間がなく、食べやすいと好評を得ている

▼昨年も大変だったに違いない。主食用米が増産された一方、もち米は品薄になった。「仕入価格は2年前の約4倍」という悲鳴も聞かれた。ここは食べることで支えたい。洋風のアレンジもできる。日持ちがするので、非常食にも向く。県内メーカーの粘り強い歩みにもあやかりたい。

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