軍事力を背景にした大国の覇権主義が目に余る。求められるのは「自国第一」からの脱却だ。世界の分断を広げぬよう、各国は国際協調の精神に立ち戻らねばならない。

 昨年、関税問題で世界を翻弄(ほんろう)したトランプ米大統領は、年が明けてすぐに、ベネズエラへの軍事介入に踏み切った。反米左派のマドゥロ大統領を拘束し、米国内の施設に収容した。

 ベネズエラの隣国、コロンビアなど意に沿わない国に対する軍事介入の可能性を否定せず、デンマーク自治領グリーンランドの領有にも意欲を示した。

 トランプ氏は11月に政権の審判となる米中間選挙を控える。軍事介入の背景には、物価高などへの不満から国民の目をそらそうとする思惑もあるだろう。

 実績作りとして今後も予期せぬ決断をする恐れもある。注視が必要だ。

 ◆力による威嚇止めねば

 高市早苗首相は5日の年頭会見で「ベネズエラにおける民主主義の回復と情勢の安定化に向けた外交的努力を続ける」と述べたものの、攻撃自体への論評は避けた。攻撃を容認していると受け取られかねない。

 首相は今春の訪米を目指している。同盟国のトップとして、国連憲章を含む国際法順守の重要性を伝えてもらいたい。

 もう一つの大国、中国も覇権主義的な動きを強めている。

 昨年末には台湾を包囲する形で軍事演習を実施した。地域の軍事的緊張を高める行為だ。

 高市首相の台湾有事を巡る存立危機事態の発言で緊張を招いた日中関係は、改善の兆しが見えない。中国側は日本への渡航自粛を呼びかけ、水産物の輸入停止も続けている。

 中国は日本の重要な貿易相手国だ。共同通信の世論調査では、日本経済への悪影響を心配する回答が「どちらかといえば」を含め、6割近くに上った。

 昨年の日中首脳会談で首相と習近平国家主席が確認した「戦略的互恵関係」の推進に向け、対話の道を探ってもらいたい。

 中国・北京で開かれた昨年の軍事パレードでは、中国とロシア、北朝鮮のトップが並び、友好関係をアピールした。

 北朝鮮は4日、日本海に向けて弾道ミサイルを発射した。北朝鮮メディアは極超音速ミサイルだとし、核弾頭の搭載が可能なことも示唆している。

 軍事力で他国を脅かす行為が許されてはならない。

 日本にとっては隣国である韓国との関係も重要だ。高市首相は李(イ)在明(ジェミョン)大統領と、首脳同士の相互往来「シャトル外交」を展開する。今月には李氏が奈良県を訪れる予定だ。

 歴史認識や領土を巡る懸案を超え、両国関係が安定的に発展することを期待したい。

 韓国との連携は北朝鮮による拉致問題解決のためにも不可欠だ。13歳で拉致された横田めぐみさんの母早紀江さんは2月で90歳になる。佐渡市で拉致された曽我ミヨシさんは94歳だ。もはや一刻の猶予もない。

 年内にトランプ氏が米朝首脳会談を行う可能性もある。交渉の糸口を見いだしたい。

 地域の安定のため、日本は近隣国と対話を重ね、信頼関係の構築に向け努力するべきだ。

 各地で続く理不尽な戦闘を止めるため、国際社会は連携して働きかけなければならない。

 ◆紛争終結が急がれる

 ウクライナに侵攻したロシアのプーチン大統領は、和平を巡り、強硬姿勢を崩さない。早期の戦争終結が求められる。

 ただ、侵攻した側のロシアに有利な和平案は、武力による現状変更を認めることになり、受け入れることは困難だ。

 パレスチナ自治区ガザでは停戦後もイスラエルによる散発的な攻撃が続いている。直ちに攻撃を止めさせ、寒空の下で飢えに苦しむ人たちを救いたい。

 昨年、ノルウェーのノーベル賞委員会がベネズエラの野党指導者マリア・コリナ・マチャド氏へ平和賞を授与した。

 同委員会は決定理由で権威主義がはびこる世界の現状に危機感を示し、平和の礎である「民主主義の炎」を絶やさないという決意を表明した。

 各地で民主主義が脅かされているという現実を受け止めねばならない。

 日本は今年、国連加盟から70年となる。国際協調の道は前途多難だが、その中でも日本は憲法で不戦を誓った国として、国際社会に平和の種をまく立場であり続けたい。