冤罪(えんざい)からの速やかな救済が再審制度見直しの原点だったはずだ。再審への道を狭くすることがあってはならない。
法相の諮問機関である法制審議会は、刑事裁判の再審制度を見直す協議を進めている。法務省は昨年12月、これまでの議論を踏まえて論点をまとめた「検討資料」を審議会の部会に示した。
再審を巡っては、規定の不備に起因した審理の長期化などが課題となっている。
法務省は部会の取りまとめを経て、23日からの通常国会への刑事訴訟法改正案の提出を目指す。
だが、主要な論点に関し、委員の一部や外部の研究者、弁護士らが強く反発している。
検討資料によると、再審請求があった場合の手続き規定を整備する。まず、裁判所が請求の形式や要件を満たしているかどうかを調査する。それを通過したものを「審判開始決定」の対象とし、証拠開示などを始める。
法務省はスピーディーな対応を促せるとする。しかし、日弁連推薦の委員らは、最初の手続きで多くの請求が退けられる懸念があるとしている。
再審請求審では、証拠開示規定が新設される。裁判所が検察官に提出を命じる対象は「請求理由に関連する証拠」とすることを軸に、検討される見通しだ。
日弁連側は、関連性のない証拠が結果的に無罪につながったことがあるとして、「開示の範囲が狭まる」と反発している。
開示された証拠の再審手続き以外での使用を禁じ、違反した場合の罰則規定が設けられる。関係者のプライバシーを保護する観点から、検察官の委員らが支持した。
再審請求審は非公開で進められるため、証拠が支援者や報道機関に明らかにされない可能性がある。重要な証拠を公にできず「ブラックボックス化」することは冤罪防止に逆行するのではないか。
忘れてならないのは、再審制度見直しに至る経緯である。
静岡県一家4人殺害事件で死刑判決を受けた袴田巌さんは2024年10月、無罪が確定した。最初の再審請求から43年後だった。法相は25年3月、制度の在り方を検討するよう法制審に諮問した。
冤罪からの迅速な救済実現のため、必要な法改正を急がなければならないのは当然である。
だが、法務省のまとめた論点の方向性に、弁護士らが反対していることは見過ごせない。法改正の結果、現在より再審のハードルが高くなったら、本末転倒だ。
懸念を置き去りにして見切り発車するのではなく、関係者から理解を得られるよう議論を尽くしてもらいたい。
冤罪は計り知れない悲劇をもたらす、取り返しのつかない人災といえる。もう二度と繰り返してはならない。
