医療を必要とする人が受診を控える事態になってはならない。負担が重くならぬよう不断の見直しが必要だ。
政府は医療費の自己負担を抑える「高額療養費制度」の見直しを決めた。月々の自己負担上限を8月から2段階で引き上げ、2027年8月に最大38%増とする。
70歳以上の外来受診費を軽減する「外来特例」も、低所得層を除き段階的に負担を上げる。
公的医療保険を維持していくために給付を抑える一定の見直しは理解できる。
治療の高度化や高額な薬剤の普及によって医療費全体が膨らんでいるからだ。現役世代の保険料負担が重くならないよう工夫しなければならない。
だが、負担増は患者が治療を我慢する事態を招きかねない。
高額療養費は、政府が24年末に決めた当初方針では月額上限を最大70%超引き上げる内容で、患者団体などの反発を受け全面凍結に追い込まれた経緯がある。
患者の意見を聴取する機会を設けることもせず、1カ月余りで決めた拙速な方針が批判されたのは当然である。
今回の見直しに当たっては、がん患者らを交えて議論した。月々の上限額を引き上げる一方、長期間治療する患者に配慮し、新たに年間上限額も設ける。
平均的な「年収約370万~770万円」の所得区分の場合、年間上限額は53万円に設定した。
直近12カ月以内に3回以上、上限額に達すると4回目から負担を軽減する「多数回該当」は現行水準を維持する。
厚生労働省は「負担が増えすぎることはない」との認識だ。しかし、全国がん患者団体連合会などは一層の負担抑制を訴える共同声明を発表した。
見直しにより、高齢世帯の負担は増すだろう。病気の不安に経済的な負担がのしかかっては苦しいに違いない。
高額療養費制度が設けられたのは、重い病気にかかっても家計を破綻させないためである。
その制度趣旨を踏まえ、国として患者の負担を抑える努力は続けなければならない。
気がかりは、医療費に関わる負担増が高額療養費だけではないという点だ。政府は、高齢者医療や介護サービス利用料の自己負担の引き上げも検討している。
他にも厚労省は、市販薬と成分や効能が似たOTC類似薬を処方された患者に追加負担を求める方針だ。OTC類似薬は、保険が適用されて市販薬より安く買えることが多いため、医療費の上昇要因との指摘がある。
負担増が積み重なることで、生活を圧迫する事態を懸念する。
一つ一つの制度だけでなく、公的保険全体を見渡して負担を抑える議論を重ねていく必要がある。
