若い頃、駄じゃれを言う上司に冷ややかな思いを抱いていた。「内容がないよう」「布団が吹っ飛んだ」。語呂合わせや同音異義語を利用した言葉遊びだが、主に年配男性が好んだため「おやじギャグ」とも呼ばれ、場を白けさせるとして若者から「寒い」とやゆされた
▼昭和が遠ざかるにつれ、駄じゃれ好きは減った。そんな中、Z世代の若者たちに「ネオ駄じゃれ」が流行しているという。「了解道中膝栗毛(了解)」「やばたにえん(やばい)」など駄じゃれと似てみえるが、TPOやセンスが一線を画すとか
▼中世の修道院が舞台のミステリー映画「薔薇(ばら)の名前」(1986年)は笑いをめぐる論争がテーマの一つだ。記号論の大家ウンベルト・エーコの世界的ベストセラーが原作だ
▼連続怪死事件の鍵を握る老修道僧は「笑いは人を猿並みにおとしめる」と笑いを否定する。名優ショーン・コネリー演じる主人公は「猿は笑わぬ。笑いは人のみに備わるもので理性のしるしだ」と反論する
▼喜劇王チャプリンは子供時代、極貧や一家離散を経験したが、「笑いのない日は無駄な一日」「人生はクローズアップで見れば悲劇、ロングショットで見れば喜劇」という笑いについての名言を残している。ヒトラーら独裁者をも喜劇に昇華してみせた
▼エーコは、人は絶望しないために笑い、笑いには真理を暴く力があると考えた。おやじギャグでも、ネオ駄じゃれでもいい。現実から距離をとり、視点を変えるために、一つひねってみるか。
