上空から降ってきた投降を呼びかけるビラを、「信じることができなかった」と語る元兵士を取材したことがある。終戦直前の1945年、フィリピン・ルソン島。敗残兵となり山中をさまよったその男性は、小型飛行機がまくビラを「敵の作戦ではないか」と疑った
▼捕虜になることは恥だ、と教え込まれたからだ。「生きて虜囚の辱めを受けず」という戦陣訓である。結局、男性は先に投降した日本人の呼びかけもあり捕虜になる。米軍から缶詰やデザートを提供され、物量の違いに、負けて当然と実感した
▼10年以上も前の取材を思い出したのは、県内でも公開中のアニメ映画「ペリリュー 楽園のゲルニカ」を見たからだ。南太平洋のペリリュー島では、日本軍1万人と米軍4万人が激戦を展開した
▼実話に基づく漫画を原作とした映画でもビラはまかれる。が、日本兵はやはり簡単に投降しない。その間も犠牲者は増える。最後まで生き残った34人が投降したのは終戦から20カ月後の47年春だった
▼アニメは「見る人が気持ちを重ねやすいように」と3頭身のキャラクターで描かれた。壮絶な戦争の臨場感が伝わるのか半信半疑だったが、杞憂(きゆう)だった。幅広い世代が、忘れてはならない史実を身近に受け止める一助となろう
▼戦後81年目に入り、戦争を実体験した人の肉声はますます遠くなる。日本は漫画、アニメ大国でもある。次世代への継承を視野に、分かりやすく伝える取り組みは大切だとの思いを抱き、エンドロールを見た。
