詩人の吉野弘さんは1926年1月16日、山形県酒田市で生まれた。存命なら、きょうは100歳の誕生日だった。「二人が睦(むつ)まじくいるためには/愚かでいるほうがいい/立派すぎないほうがいい」-。代表作の一つ「祝婚歌」は、めいの結婚のお祝いに作ったものだ

▼「奈々子に」は、長女が生まれて間もなく書いた。こんなくだりがある。「お父さんは お前に/多くを期待しないだろう。/ひとが/ほかからの期待に応えようとして/どんなに/自分を駄目にしてしまうか/お父さんは はっきり/知ってしまったから。」。父のまなざしは優しく温かい

▼この詩を載せた中学校の国語教科書もあった。けれども吉野さんは、読み返すと気恥ずかしくなるため「あまり好きではない」とつづっている

▼長女の奈々子さんは、自分が有名になったような気がする一方、学校で父の詩を学ぶことになりはしないかとひやひやした。父の愛にようやく気が付いたのは、自身の子どもたちがすっかり成人してしまってからだった、という

▼詩はこのような5行によって結ばれている。「お前にあげたいものは/香りのよい健康と/かちとるにむづかしく/はぐくむにむづかしい/自分を愛する心だ。」

▼大学入学共通テストが17、18の両日実施される。いよいよ本格的な受験シーズンがやって来る。受験生だけではなく、保護者の皆さんも、期待と不安で胸が詰まる思いだろう。時には吉野さんの詩を唇に乗せ、ひと呼吸置いてはどうだろうか。