まだ空は暗かった。明るくなるにつれ、被害の大きさが分かってきた。テレビ画面に映し出される神戸の街に、言葉を失った。阪神大震災が発生したのは1995年1月17日午前5時46分。あれから31年が過ぎた
▼この間、震災の教訓を伝える役目を果たしてきた施設の一つが、神戸市にある「人と防災未来センター」だ。体験型のプログラムを通して災害への備えを学ぶことができる。以前訪れた際に印象に残ったのは、震災を追体験できるフロアだ
▼シアターでは発災当時の状況を再現した映像「5時46分の衝撃」が上映されている。激しい揺れで家屋やビルが崩れ落ち、高速道路が横倒しになる表現はリアルだ。映像制作に当たり、発災の瞬間を記録した実際の映像はほとんどなかった。再現に取り組んだのは、東宝の特撮映画のスタッフだった
▼再現映像の美術を担当した三池敏夫さんは多くの作品で腕を振るってきたが「フィクションとは違う。うそはつけない」と特別な思いで参加したという
▼震災前後の写真を参考にして建物がどう崩れたかを想像し、ミニチュアを設計した。これまでに培った技術を駆使しリアルな表現にこだわったが、映像に人の姿はない。被災者の心情に配慮し、犠牲者の存在を思わせる描写を避けたのだそうだ
▼三池さんは大きな犠牲を出した震災を再現することに「葛藤もあったが、意義のある仕事をさせてもらった」と振り返った。映像は今も、あの日あのとき何が起きたかを、来訪者に伝えている。
